農薬に頼らない害虫対策を目指して!

 世界的に農作物の安全性に対する関心が高まる中、熱帯樹木である「ニーム」の木が注目されています。
 「ニーム」とは主にインド・東南アジアで栽培されている薬木(インドセンダン)の名称で、その様々な効果から、現地では日常的に生活の中に取り入れられいろいろな使い方をされてきました。その中でも特出すべきは、ニームの木がもつ「害虫が寄り付きにくい環境をつくる効果」です。

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●ニームの特徴


 ニームには大きくわけて3つの特徴があります。
  • 作物に害虫が寄り付きにくい環境を作る忌避作用
  • 害虫に食欲減退をもたらす拒食作用
  • ホルモンの働きを抑え害虫が成長しづらくなる脱皮阻害作用
 米国農務省のレポートによると、ニーム製品は害虫のさまざまな成長段階に干渉することによって害虫の成長に影響を与えることが明らかになっています。ニームの各種成分は害虫の生命にきわめて重要なホルモンの形や構造によく似ています。害虫はニームの成分をあたかも必要な真のホルモンのごとく吸収するのですが、ニーム成分は害虫の内分泌機能の働きを妨害します。その結果として昆虫の生来の行動及び生理機能に変化が生じて害虫の脳と身体に混乱をもたらし、繁殖能力を失って害虫の数が減少することになります。

 ニームの3大特徴のなかでも、主となるのは摂食を阻害する作用です。害虫は、普通ニームで覆われた植物を食べることを拒否し、餓死するまで拒否します。また、忌避効果で害虫の繁殖能力を減少させます。
 一般の農薬と異なる点は、すばやく毒殺するのではなく、餓死させることで害虫を駆除し、劇的に子孫を減少させます。鳥や益虫は、ニームによる悪影響を受けることはなく、生き残って弱った害虫や幼虫をえさにします。その結果、環境を汚すことなく、植物に対する害虫の被害を抑制することが出来ます。

 ニームは、動物や人間に対して無毒です。ニームが散布された場所は毒性がなく、典型的な合成殺虫剤を散布した場所のように何日間も避けなければいけないということはありません。ニームはまた、天然の生分解性素材です。植物を食べる昆虫のみが影響をうけ、ミツバチや他の益虫は本質的に害を受けることはありません。

 ニームに発見された最も活性の強い殺虫性化合物はアザディラクチン(azadirachtin)であり、摂食阻害剤として作用します。アザディラクチンは、昆虫に対しニームで噴霧された植物の摂取を拒否させます。昆虫は、植物についてぞろぞろ這い回りますが、アザディラクチンが植物に噴霧されている限り、摂食を拒否します。

 アザディラクチンと同様に重要なことは、ニームの真の効力が、昆虫の生命の異なる側面に影響を及ぼす全ての化合物の相互作用から生じるということです。忌避剤として作用する別の化合物は、昆虫に繁殖不能の卵を産ませ、脱皮を阻止します。また、別の化合物の効果を単に強化する化合物もあります。昆虫に影響を与えるニーム化合物は数が多く複雑なため、正しく使用すれば、ニームに対する耐性が作られることは到底ありません。昆虫は多数の合成殺虫剤に対しすぐに耐性を持つため、これは非常に重要なことです。

参考文献
ニーム―忌虫効果で無農薬を可能にするインドセンダン(ジョン・コンリック著 フレグランスジャーナル社)

次は、ニームを使った作物の害虫忌避についてです。