人は昔から、木を使って
さまざまな道具をつくってきました。
ヒノキは、縄文時代から他の木とともに使われはじめ、
弥生時代にブレイクしました。
日本に鉄の技術が入ってきて、
さまざまな道具がつくられはじめたのが、
ちょうどこの時代になります。
カンナやオノなどの出現によって、
加工のしやすいヒノキは、たちまち人気モノになりました。
建築材・仏像・指物・家具・曲物・桶 などなど。
ほんとうに、たくさん使われてきました。
建築物として有名なのは「法隆寺」。
曲物として有名なのは「わっぱ」。
大きなものから、小さなものまで。
頭と手と時間を使って、
日本人は生活をより豊かにするために、
生活に必要なものをつくり続けてきたのです。
ヒノキは、そのために欠かせない素材だったようです。
ヒノキは「火の木」。
油分が豊富で、古代この木を使って火をおこしたことから、
このように言われています。
ヒノキは「良(ヒ)の木」。
「ヒ」という発音には「良い」という意味があり、
ここからきたのでは、という説もあります。
いずれにしても、人々の生活の中に根づいていたことが
うかがい知れます。
ヒノキといえば、とても強い香気を放つのが特徴です。
木の香り成分「フィトンチッド」が、ストレス解消・疲労回復・消臭・防ダニなどの働きをしてくれます。
この「フィトンチッド」は、ヒノキに限らずあらゆる木の幹や葉からでるものです。
他の生物をやっつける能力もあり、植物は生きるためにこの香りを放っているといえます。
木から香りの成分だけを取り出したものを精油といいますが、ヒノキは、精油量の多い樹種です。
「フィトンチッド」にもさまざまな種類と働きがあるため、木の種類によっても香りが異なります。
同じヒノキでも、産地によって異なります。
自分自身を守るために放つ香りが、私たちの暮らしも守ってくれているのです。
木には、芯材(木の中心部分)と、辺材(皮に近い外側部分)があります。ヒノキは、芯材と辺材の色の差が目立たない、控えめな表情をしています。
芯材は、淡いピンク色。辺材は、黄味を含んだ白色。使い込めば、どちらも飴色になっていきます。
目は緻密で、清潔感があります。肌触りはなめらかで、やさしい感触です。
お寿司屋さんのカウンターにヒノキが使われていますが、醤油やビールをこぼしても、いつまでもきれいなままです。
おいしいお寿司屋さんほど、きちんとメンテナンスしているようです。
ヒノキは、切ってから200年まで強くなり続けるといわれています。
200年からはゆっくりと強度が弱まっていきますが、1000年くらい経って、ようやく切ったときの強さに戻ります。
逆に、広葉樹などは、切ったばかりがいちばん強いといわれています。強度は、少しずつですが弱くなっていきます。
ヒノキが好んで建築材に使われるのは、この強さがあるためです。
昔の人は、このことをよく知っていたのですね。