オーガニックコットンから見えてくる
現代の問題点

私はよく、現代人は日々の生活の中でいったいどのくらいの化学物質を体にとりこんでいるのだろう?と考えて怖くなることがある。

というのも、朝起きて、まずトイレで、漂白されたトイレットぺーパーを使い、時に女性だと高分子吸収態のナプキン、タンポンを使い、合成の界面活性剤入りのはみがき粉で歯を磨き、合成シャンプー&リンスで髪を洗い、化学薬剤、防腐剤いっぱいのスタイリング剤や化粧品で身だしなみを整える。そしてテーブルにつき農薬を使って栽培されたお茶をのみ、合成洗剤で洗った食器で、抗生物質を使って育てられたお肉やソーセージや卵、ダイオキシンで汚染された魚、除草剤や化学肥料を使った野菜を食べる。残った食べ物は、塩化ビニールでできたラップをし、電子レンジでチンをしてまた食べる。そして、農薬、枯葉剤を散布し、化学肥料、柔軟加工、防縮加工、化学染色されたコットン製品や化学繊維の衣類を着て、それを合成洗剤で洗濯し、柔軟加工剤を入れたりする。
赤ちゃんがいれば、ほ乳瓶を殺菌剤にひたし、紙オムツを使い、多くのゴミを捨てる。部屋には、防炎加工したカーテン、揮発性の高い塩化ビニールでできた壁紙や合成化学塗料、合板のフローリング、鮮やかなグリーンで染色され防虫シートをしきつめた畳、そして合成接着剤などを使った家具などなど・・・・もう挙げだすときりがない。体のすべての部分から化学物質を取り込む状態で生活しているのだから、体が変にならないほうが、おかしいくらいに思える。

現在、私は、オーガニックコットン製品(無農薬有機栽培綿)と天然液体せっけんのブランド「メイド・イン・アース」で、商品企画開発の仕事をしている。メーカーにいると、消費者でいるときにはわからなかったことを知る機会が多い。このオーガニックコットンというのは、農薬、化学肥料など一切使わずに栽培した綿のこと。
綿がなぜオーガニックか・・・?。
とよく聞かれるが、綿栽培における農薬、化学肥料の使用量は、全世界の農薬使用量の約25%。すごい量である。そして、メイド・イン・アースのコンセプトは、「栽培だけでなく、製品加工する段階でも、化学薬剤を一切使用しない」。それは、環境のことやコットンの天然のやわらかさ、エネルギーをそのまま製品に残したいからである。だが、この製造過程で化学薬剤を使わないと、どうなるか?・・・。糸を紡ぐときにも合成のりを使わないので、高速回転の機械は使えない。タオルを織るのも時間がかかる。そして、生地を作る時に、製品にあった生地幅を決めて製造するわけだが、いざ生地ができ製品化に入ると、予定していた枚数がとれない。調べてみると生地の幅が減っているのである。薬品加工をしていないと、生地を作った時点では指定の幅でも、時間が経つとこういうことが起きるのである。
色の問題もそうである。

メイド・イン・アースでは、染色ではないコットンのもともとの色の 3色(きなり、茶、グリーン)を製品化している。
だが、この天然の色というのも非常にやっかいなのである。グリーンのタオルなどは、さわやかな若草色の時もあれば、グレーがかったグリーン、濃いグリーンと一定しない。天然だからあたりまえなのだが、色の変化で同じ製品に見えなくなってしまうのである。どの色もいい色合いなのだが、若草色のグリーンと深い濃いグリーンだと、製品化したときには別ものなのである。
「このまえ若草色のを買って気に入ったからまた買ったのに・・・」と返品にもなりかねない。となると、薬品加工をしないでいることは、消費者にいろいろな情報をお知らせして、理解してもらう手間がとても必要になるのである。
多くの企業が、薬品加工をしてしまう経緯は、手間を排除し、大量生産、製造の効率化、消費者からのクレーム対策などからきているのだと思う。ただ、そのために、多くの化学薬剤を使用し、排水として流す。それが、環境汚染となって、私たちの体に取り込まれてゆく。企業という大きなくくりでなく、代表取締役、工場長、現場のスタッフなど、すべて個人レベルの責任だと感じて製造してもらいたいと願っている。自分の子供に安心して与えられないものは作らない。というようなポリシーをもってもらいたいものである。

ところで衛生処理用品についてだが、今年の1月に新製品として、オーガニックコットンの生理用ナプキンの販売をはじめた。消費者の方からの「布ナプキンはありませんか?」という問合せがきっかけで、製品化をすることになった。
その問合せを聞いたときに、「ナプキンは高分子吸収体じゃなくてもいいんだ。と目からうろこが落ちる」状態になった。まったく、私たち消費者は、これしかないと、あたりまえに思わされている事が結構多いのである。
最近、衛生処理用品のナプキン、タンポン、紙オムツなどによる健康被害が急増しているといわれている。子宮内膜症などがその代表的な例だが、この病気にかかると、生理のときに子宮の内側から流れおちるはずの子宮内膜細胞が逆流し、卵巣・腹膜など別の場所で増殖しはじめ、この細胞が女性ホルモンの働きで生理周期に反応して周期的に出血するため、周辺部分を圧迫して強い痛みを伴う。
子宮内膜症について、米ウィスコンシン大学の女性研究者シェリー・ライアーらが1977年に開始し1993年に発表したアカゲザルの実験がある。24匹の雌ザルを8匹ずつ3群に分け、えさにダイオキシン(2,3,7,8-四塩化ジベンゾ・パラ・ジオキシン)を混ぜた。「第1群」はダイオキシンなしの対照群、「第2群」はえさ1グラムあたり5ピコグラム、「第3群」は25ピコグラム混ぜて5年間、飼育した。ダイオキシン投与をやめて一年後までに「第3群」の3匹が死んだ。残りのサルについて詳しく調べたところ、「第1群」で子宮内膜症にかかったのは33パーセント、これに対し「第2群」は71パーセント、「第3群」では86パーセントだった。症状は第3群がもっともひどい。
この研究が出る前年の92年、子宮内膜症の患者はダイオキシン類と同様の毒性をもつポリ塩化ビフェニール(PCB)類の体内濃度が高いとドイツの医学研究者ゲアハルトらが発表している。女性ホルモンが働くことで子宮内膜が形成されることから、疾患の大きな要因はダイオキシンなど内分泌撹乱物質(環境ホルモン)だと考えられている。素材の塩素漂白がひとつの原因でダイオキシンを含むのである。

メイド・イン・アースの布ナプキンは販売を開始してから、肌のデリケートな人、環境を考えている人などからの問合せも多く関心の高さを感じている。製品にはアンケート用紙が入っているのだが、ほとんどが、高分子吸収体ナプキンでのかぶれ、不快感などを訴えている回答である。自分で手縫いで作っている人も多く、病院からすすめられるケースもある。こんなナプキンがほしいとデザイン画を書いてくる人までいる。使い捨てに対する罪悪感を持ち続けていた人が、布ナプキンの存在で救われたともいう。いろいろな観点から布ナプキン愛用者が増えているのである。下着と同じ生地で自然環境にも負荷を与えず、オーガニックコットンのふわふわした心地よいやわらかさが気に入った人ももちろん多い。あのゴワゴワとした不快感やかぶれ、匂いなどがなく、体にも自然にも優しく気持ちがよいから、愛用者が増えているのだとも思う。

そして、もうひとつタンポンの問題も重要である。
中毒ショック症(TSS)と呼ぶ急性症状をを引き起こすからである。1980年にアメリカでタンポンが原因と思われる症状で38人の女性が亡くなった。タンポンの吸収効率をよくするため、メーカーは以前からレーヨン繊維を使ってきた。水分を吸収すると繊維がほぐれて、細かい繊維が膣壁にささる。すると傷ついた場所で、いつもはおとなしくしているブドウ状球菌が増え、菌の毒で高熱が出て血圧が下がり、嘔吐・下痢・筋肉痛などが生じる。とくに生理中のティーンエージャーに多く見られる。
合理的なもの便利なものの影には、必ずマイナス点があるように思う。食品でも雑貨でも、商品は店頭にならんでしまうと、何がどう入っているのかわかりにくい。指定成分が入っていない表記だから安心。なんてこともない。
となるとどうすればいいのか?やはり、真実をみんなが知って、消費者の大きな力で変えてゆくことが必要なのだと思う。

それからもうひとつ、ナプキンなどの医薬部外品指定の基準が、高分子吸収体のナプキンのためだけに作られている基準なのがおかしい。法自体が、情報も開示しないナプキンを守っているつくりであり、大手メーカーの集まった組織が、試験方法などの本も出している。
「色は、白色であり、吸収力は本体の重さの十倍でなければならない。」などとあるのだが。
白は、真っ白に漂白されたもの以外はだめといわんばかりに、オーガニックコットンの無漂白の白色などは、白として認めてもらえない。ちなみに、リサイクルペーパーなどの無漂白の白は、白だということだから不思議だ。吸収力も実用ではそこまで必要ないであろう数字が必要なのである。その納得がいかない基準のおかげで、メイド・イン・アースのナプキンには、生理用という表記がつけられない。尿もれパッドの域を越えられないのである。

話はそれてしまったが、個人レベルでは、「感覚」が大切だと思っている。私は、おいしいという理由から、5、 6年、有機野菜や加工品を食べている。もちろん外食もすれば、コンビニでお菓子も買ったりするのだが、そういう無添加のものを多く取り込んでいるとなぜか添加物などが入っていると、漠然とした感じではあるが判るようになってくる。職業柄もあるが、いろいろなものに感覚が広がってくるように思う。
冒頭に書いた、生活のあらゆる場面で取り込んでる化学物質をできるだけ少なくして生活してゆきたいと思う。それには、人間の本来もっている、有害を見極める「感覚」も重要になってくると思う。いろいろな化学物質によって感覚がかなり麻痺させられているように感じるからである。そして環境問題や衛生処理用品が投げかける問題はダイオキシン含有にとどまらず、素材のプラスチックの問題、ゴミの問題など、どれひとつとっても早急に、なんとかしなければいけない、私たち人間、動物、植物そして地球の問題なのだと思う。