【1】栽培の基礎知識  【2】栽培方法  【3】種類別の育て方

【1-1】栽培の基礎知識       【1-2】病気と害虫  【1-3】コンパニオンプランツ  【1-4】防虫利用できるハーブ  【1-5】園芸用語集

【A】 ハーブの好む環境について
ハーブはそれぞれの原産地で自生している植物のなかから、人間が自分たちの生活に有用なものを選び出し利用してきた植物です。スーパーに並んでいる野菜などと違って、改良の歴史の浅い、野生に近い栽培植物といえるでしょう。ですから、原産地の気候に適応した性質を多く残していますので、原産地の気候条件がそのハーブの好む環境といえます。その性質は、日本の気候条件と異なる場合もあり、その違いをうまく調整してあげることがハーブを上手に育てるコツになります。

地中海原産
地中海沿岸の気候は、夏は涼しく乾燥気味で、冬は温暖で雨が多めです。
土の性質:弱アルカリ性〜中性
対策:水はけのよい土を用いて植え付けます。雨の多い地域や冬に気温が氷点下に下がるような地域では、コンテナ栽培がよいでしょう。
ラベンダー、ローズマリー、タイム、セージ、ミント、フェンネル、カモミール、オレガノ、アルカネット、オリーブ、キャットニップ、サフラン、サントリーナ、イタリアンパセリ、ヒソップ、フィーバーフュー、ボリジ、マジョラム、マロウコモン、ラムズイヤーなど

ヨーロッパ地方原産
夏は乾燥気味で涼しく、冬は寒さが厳しい地域です。
土の性質:弱アルカリ性〜中性
対策:夏越しがポイント。夏の暑さの厳しい間は風通しのよい、日陰で育てましょう。庭栽培の場合は日除けをし、株本にバーチクルなどでマルチングして、地温の上昇を防ぐようにします。
ワイルドストロベリー、アーティチョーク、アンゼリカ、カラミント、カレープランツ、サラダバーネット、ソープワート、タラゴン、タンジー、ダンディライオン、チコリ、チャービル、チャイブス、ディル、ホップ、マーシュマロウ、ヤロウ、ルバーブ、レモンバームなど

中国原産
夏は高温多湿で、冬は乾燥します。
土の性質:弱酸性
対策:日本の気候に近いので、この地域の原産のハーブは育てやすいです。
ジャスミン、チャイブスなど

熱帯地域原産
1年を通して気温が高く、雨が多い。
対策:夏は問題なく成長しますが、冬の間は鉢やコンテナなどに鉢上げして室内や温室などで冬越しさせてください。
バジル、レモングラスなど

南アフリカ原産
雨季と乾季がはっきりしている。
対策:夏は問題なく成長します。寒さの厳しい場所では冬越しはむずかしいので、鉢やコンテナなどに鉢上げして室内や温室などで冬越しさせてください。
センテッド・ゼラニウムなど

中南米原産
雨が多いが水はけがよく、乾燥気味を好むハーブが多い。
対策:水はけの良い土に植え付けます。耐寒性の弱いハーブは、冬は鉢上げして室内や温室などで冬越しさせてください。
アニスヒソップ、ステビア、ナスタチューム、レモンバーベナなど


【B】 栽培に適した土について
ハーブにとって快適な土は、通気性がよく、保水性があり、なお余分な水を排する力を兼ね備えた柔らかい用土で、中性から弱アルカリ性です。
赤玉土や腐葉土、ピートモス、パーライトなどを混ぜてそれぞれのハーブに合った土作りを行いますが、ホームセンターなどで販売している、花栽培用や野菜栽培用の培養土でも大丈夫です。


【C】 水やりについて
コンテナや鉢での栽培の水やりの基本は、土の表面が乾燥したら、鉢底から水が流れ出るまで与えるのが基本です。全体にゆきわたるよう、まんべんなく水を掛けます。乾燥を好む好まないにかかわらず、この方法で行えば、まず失敗することはありません。

注)乾燥を好むハーブ:土の表面が完全に乾いたら与えます
  湿り気を好むハーブ:乾き切る前に与えます
  (夏場は葉や茎に水が掛からないようにポットの土に直接水やりします)

庭で栽培する場合は、植え付け時に、根に充分ゆきわたるように、たっぷりと水を与えますが、その後はほとんど必要はありません。何日も雨が降らなくて、株がしおれそうになっていたら朝か夕方に水を与えます。


【D】 肥料について
ハーブは栄養分のないやせた土地に自生して育つものも多くあります。
そういったハーブに必要以上の肥料を与えると、弱々しい株に育ち本来楽しみたい香りや効果が薄れてしまうことがあります。しかし、まったく施せなければ、成長しません。適期に適度な量を施すことが必要です。

肥料は、手軽な液体肥料や化成肥料でも問題ありません。また、有機栽培を行いたい場合は有機質肥料を使うのもよいでしょう。

肥沃な土を好むハーブ
アーティチョーク、アラビアンジャスミン、オレガノ、キャラウェイ、コリアンダー、スイートバイオレット、スープセロリ、ステビア、セージ、チコリ、チャービル、チャイブス、ディル、バジル、イタリアンパセリ、フェンネル、マジョラム、マシュマロー、レディースマントル、レモンバーム、ロケット、ルバーブなど
元肥を施します。
コンテナ栽培:月に1度置き肥、または2週間に1回液体肥料を施す。
庭栽培:成長期と収穫後、秋に追肥する。

痩せ地を好むハーブ(あまり肥料がいらないハーブ)
ラベンダー、レモンバーベナ、ローズマリーなど
元肥はほんの少し施します。
コンテナ栽培:春から初夏と秋に月1回、ごく薄い液体肥料などで追肥します。
庭栽培:追肥しない。

【E】 各ハーブの栽培条件(耐寒性、水やり、日当たり、土質について)
温度について (生育適温)
耐寒性、半耐寒性、非耐寒性、の3種類で表しています。原産地の生育適温が育てる気温の基準になります

耐寒性 (冷涼地産)
 気温5℃で生育を始め、10℃〜20℃が生育適温
 耐寒性能力: -11℃以下

半耐寒性 (温暖地産)
 気温10℃で生育を始め、15℃〜25℃が生育適温
 耐寒性能力:温暖地産で耐寒性の弱いタイプ    2℃〜-5℃以上
         温暖地産で耐寒性の強いタイプ    -6℃〜-10℃以上

非耐寒性 (熱帯地産)
 気温15℃で生育を始め、20℃〜35℃が生育適温
 耐寒性能力: 3℃以上

水やりについて
多湿、普通、乾燥気味、の3種類で表しています。原産地の降水量は水やりの基準になります。

 多湿:土の表面が乾き切る前に水を与えます。
 普通:土の表面が乾いてきたら水を与えます。
 乾燥気味:土の表面が完全に乾いたら水を与えます。

地中海沿岸産のハーブは、月の平均降水量が100mm以上で平均気温が18℃以上の期間は蒸れに対する注意が必要です。その条件は日本では北海道を除く本州以南に当たり、梅雨の時期から9月の初旬頃まで何らかの対策を行った方がよいでしょう。

<水やりの対策例>
  ・直接雨が掛からないようにし、朝か夕方に水やりを行います。
  ・葉や茎に水が掛からないようにポットの土に直接水やりします。
  ・底面灌水を行い葉や茎に水がかからないようにする。


日当たりについて
日なた、日なた〜明るい日陰、明るい日陰、の3種類で表しています。
この場合の日なたとは1日に5〜6時間くらい日に当たる場所をいいます。


土質について
肥沃、普通、痩せ地、の3種類で表しています。



【F】 夏越しについて
ハーブの多くは、日本の高温多湿の環境が苦手です。梅雨時から暑さの厳しい夏を上手に乗り切ることができれば、秋からはまたハーブの収穫を行うことができます。

夏の直射日光を避けるハーブ
暑さが苦手で直射日光を避けた方がよいハーブは、梅雨が明けたら、明るい日陰へ移動させましょう。庭栽培の場合は、上に寒冷紗などを掛けて日陰にします。
 例: スイートバイオレット、チャービル、イタリアンパセリ、フィーバーフュー、レモンバーム、サントリーナ、タイム、ナスタチウム

夏の時期の乾燥に気をつけるハーブ
夏の強い直射日光による、土の温度の上昇と急な乾燥に弱いハーブは、株元をバークチップや藁などを敷いてマルチングすることにより土からの水分蒸発を防ぎ乾燥から守る効果があります。
 例: チャイブス、キャットニップ、チャービル、ディル、フェンネル

水やりで蒸れやすいハーブ
夏の高温で水やりした水分が温まり、その水分で葉や根が蒸れやすいハーブは、みずやりの方法を工夫します。
日中の暑い時間帯は水やりを避け、涼しくなった朝か夕方に水やりを行います。また、葉や茎に水が掛からないようにポットの土に直接水やりを行ったり、底面灌水を行い葉や茎に直接水がかからないようにします。
 例: カモミールローマン、カモミールノンフラワー、タイム


【G】 冬越しについて
日本は南北に長く、冬の寒さは地域によって異なります。ハーブも耐寒性がそれぞれ違い地域によって冬越の方法も異なってきます。

寒さに弱いハーブ(非耐寒性)
熱帯地方原産のレモングラスなどの非耐寒性のハーブは、庭栽培している場合は、鉢上げして、室内の日当たりのよい場所で育てます。春になったら、また、庭に植えなおします。
室内で管理するハーブ: レモングラス、アラビアンジャスミン

凍らなければ屋外でも冬越しするハーブ(半耐寒性)
半耐寒性のハーブは、関東南部から南の地域では、屋外でも冬を越すことができます。鉢やコンテナ栽培の場合は、北風が当たらない場所に置き、マルチングしておきましょう。
霜に当たると枯れてしまうので、寒さが厳しくなる夜間は、霜を避ける工夫をするか、室内に取り込んでおくとよいでしょう。庭植えしたハーブは、株元をマルチングして保温しておきましょう。
屋外でも冬越しするハーブ: コリアンダー、マジョラム、スープセロリ、ステビア、タイム、ロケット、センテッド・ゼラニウム、レモンバーベナ

寒冷地でも冬越しするハーブ(耐寒性)
地植えのハーブは、株元をマルチングして、丈夫な支柱で囲い、通気穴をあけたビニールをかぶせておきます。
鉢やコンテナ栽培しているものは、できるだけ日の当たる暖かい場所で管理し、寒さが厳しくなる日は、室内へ取り込むとよいでしょう。
寒冷地でも冬越しするハーブ: アーティチョーク、アニスヒソップ、イタリアンパセリ、オレガノ、カラミント、キャットニップ、キャラウェイ、サラダバーネット、スイートバイオレット、セージ、チャイブス、ミント、ラベンダー、レモンバーム


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