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朝から聞き覚えのあるチャイムが鳴り響く。
大阪の下町、とある進学高校の裏庭の近くに、
築40年の小さな小さな洋裁工場があった。
「佐々木さん、えらい綺麗になってません?」
「そうよ!片付けたよ、もう大変よ」
顔を見合わせて一緒に笑う。
キューズベリーさんが来るからと、前日から片付けられた
玄関にはきっちりと人数分のスリッパが用意されていた。
佐々木さんは現在77歳。
使い込んだ愛用のミシンを何台も並べて、
キューズベリーのマザーズバッグや抱っこひもを
今日もダダダ…!と縫っている。 |
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20年前にご主人を亡くしてからは、
近くに住んでいた息子さん夫婦と
一緒に暮らしているのだという。
そんな佐々木さんが仕事でミシンと出会ったのは
昭和33年、ご主人が友達とミシンの貿易会社を立ち上げてからだ。
仕事も順調に上を向き、
ご主人が独立を決めてからは、
ヨーロッパにも輸出をしていたのだとか。
「のんびり主婦生活をしてたこの時が一番楽やったわ」
このとき、佐々木さんには三人の息子たちと旦那様。
男家族で、家事にいささか手がかかるも、
パワフルな佐々木さんにはお手のもの。 |
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ところが、こんな幸せな生活にも転機は突然やってきて、
10年余り続いたご主人の貿易会社がまさかの連鎖倒産。
家族は途方に暮れてしまう。
されど佐々木さんはめっぽう強い”大阪のお母さん”
持ちまえの気さくさで、家族をひっぱろうと
自宅でお好み焼き屋さんを始める。 |
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「いっとき、よう流行ってたんよ!」
近くの学校の学生さんがお昼休みに食べにきたり、二階の空き部屋は学生さんに貸してあげて、いつの間にか寮になっていたり。
佐々木さんのすることには、枠や線引きなどは存在しない。
笑い話も、時には愚痴も、ひょうきんに話して明るく生きる
佐々木さんに、学生さん達も自然と心惹かれたのかもしれない。
こんな突拍子もないエピソードに私達は驚かされてばかりいる。
そして、子供の頃洋裁学校に行っていた記憶を頼りに、
ベビー服を作る内職を始めたのが昭和50年ごろ。
やると決めたらとことんやるのが佐々木さん流。
動力ミシンを半年間習いに行った後、
すぐにミシン屋さんに頼んで、
裁断台や工業用ミシンを用意してもらったんだとか。 |
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洋服作りのお仕事はチェックが厳しい。
幅や柄合わせまで、細かい所まで指示があり、
さらにスピードも求められる。
でも、だからこそ佐々木さんの
ミシンの腕はみるみるうちに磨かれていった。
「まぁ、縫うの好きやから」
「縫うの楽しいよ」
仕切りに繰り返す佐々木さん。 |
ありふれた言葉でも、
長い年月を経て続けてきたときの”好き”は、
なんだか重みが違う気がする。
愛用しているトヨタのミシンとは
もう30年の付き合いになるそう。
チョキチョキ、ダダダ…!
佐々木さんが育んできたこのリズムは、
今も魔法のように素敵な一品を作りだしている。 |
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