革の歴史は古く、なんと有史以前(文献などの歴史記録が存在しない時代)までさかのぼります。
氷河期に存在した人類の祖先は狩猟生活を営み、食べた後の皮を活かして、
天候の変化から身を守るための衣類や、物を運搬するための道具を作っていました。
皮は腐食するのが速いことから、すでに数千年前から、
腐食速度を遅らせるための様々な技術が発展し、長持ちする革が存在しています。
また、現在のなめし加工や染色の礎となる技術の痕跡が文明早期の埋蔵物から発見されており、
革を生活の重要な道具として使い続けてきた様子がうかがえます。
人類の文明が発展するとともに、革の登場は多岐に渡ってきます。
鞍や武具、テントや寝具、バケツ、衣類と、実に様々なシーンで革が用いられるようになります。
古代エジプト文明では、革加工を専門に扱うプロも登場し、技術はさらに磨かれてゆきます。
その様子は発掘された紀元前1450年頃と推定されるレリーフにも描かれています。
中世になると装飾性が豊かになり、刻印や金装飾を施した革細工が現れ、刀の鞘や馬具などにふんだんに盛り込まれるようになります。
現代でも高い評価を得ているモロッコ革(ヤギ革)は、中世のムーア人によって技術が確立されました。
ヨーロッパ大陸で革産業が盛んになる中、アメリカでは先住民族インディアンによる独自の革製法で、
衣類などの生活用品や馬具、武具などが作られていました。
1492年にスペインの命を受けたコロンブスによってアメリカ大陸が発見され、
スペインの革工芸品がアメリカに持ち込まれます。これによってさらに革技術が発展していきます。
現代でも北米のステアという地域は、世界最大の輸出量を誇ります。
その後の革産業は多様化を見せるも、自然素材からなめしに用いられる
タンニンを生成する製造技術に、さほど変化は見られませんでした。
しかし、18世紀から19世紀にかけて巻き起こった産業革命の波は革産業にも及びます。
薬品によるなめし方法の発明、クロールなめし方法の発明が相次ぎ、量産を可能とする皮革工業の礎となりました。
この頃に共に大きな変革を見せるのがファッション界。
織物産業の発展や、ファッションが貴族階級から市民レベルに浸透してきたことを受けて、
革職人の動向も大きく変わってきます。
今でもトップクラスの品質と絶大な人気を誇る革ブランドの名前が誕生するのもこの頃から。
移動が船舶から鉄道へと変わる中で、鞄やトランクの形状も変わり、それぞれに得意分野で名声を博していきます。
また、女性が社交的な場へ登場する機会が増え、
裁縫道具やコインしか持たなかった時代から、身の回りの物を持ち歩くためのバッグが必要不可欠になり、
新技術が次々と発明される時代と重なるように、バッグのファッション化が始まるのです。
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