Page Top


青銅器の龍シルバー古代人の創造した「龍」、その原初の姿。

龍、それは天空を飛翔し、水中に棲まうもの。天と地を媒介する境界的存在。猛獣や
猛禽類の体の一部を併せ持ち、地上から超越した複合動物。善と悪、死と再生、創造
と破壊の対極要素を一にした神。あるいはその使い。龍は概ねこのようなイメージで
語られる。それはいったいいつごろ誕生したのだろうか。人間の想像力が
作り出した龍の歴史は古く、有史以前より様々な器物の装飾にその姿を現す。
青銅器の龍-古代人の想像力と造形力

青銅器の龍

獣面文、饕餮文※トウテツ龍や鬼神の奇怪な文様。

鉄がまだ知られぬ青銅の時代、中国の古代王朝「殷」では、青銅器芸術が一種の頂点に達する。呪術性を帯びた祭礼用の青銅器には龍や鬼神などの奇怪な抽象的文様が器面を覆いつくした。怪獣を思わせる不気味な形相、飛び出した一対の眼、顔や体を隙間なく埋め尽くす渦巻状の雷文、身をくねらせ咆哮する裂けた口、時にグロテスクとさえ感じる造形は見るものを威嚇し、人間の原初的恐怖を呼び起こさせる。これらの装飾文様は獣面文または饕餮(トウテツ)文と呼ばれている。

龍の誕生古代人の想像力と造形。

この時代、龍的なものの形態はひとつではなかった。龍がひとつの形態に収斂してくるのは後世の漢代の頃であり、そこに至るまでにあらゆる観念に基づく諸形態があった。龍は空想上の動物であるからこそ不定形なものであり、古代の工人たちはあらゆる想像力を駆使し、信仰や畏怖の対象であった動物を融合させ器面に龍を創り出していったのである。

青銅器-神々の紋様と変遷誇張された奇怪な文様は邪悪に打ち勝つ力の象徴。

獣面文にはいくつか興味深い特徴がある。第一に左右対称を原則とし、向かいあった
二つの動物の側面が鼻梁で突き合わさって一つの動物の正面になっている。一に
してニ、ニして一、森羅万象の根本理論を陰と陽の2つのカテゴリに分けて説明する
中国の陰陽思想がここに秘められている。第二に顔面から飛び出した大きな眼。眼は
心を見透かし、相手を威嚇する。眼を怖れるのは動物の本能である。力を宿す眼を
表現するためひときわ大きく誇張された。
青銅器-神々の紋様と変遷

饕餮文

古代王朝「殷」19世紀以前まで殷は伝説上の王朝とみなされていた。

紀元前1600年頃 - 紀元前1046年まで続いた中国最古の王朝「殷」。現代では史実
として語られるが19世紀以前まで殷は伝説上の王朝とみなされていた。その理由は
1000年以上も後世に書かれた「史記」などの文字史料による記載だけで実在の根拠
となるものが何も発見されていなかったからである。殷が実存するという証拠が
見つかったのはある偶然のきっかけだった。
古代王朝「殷」

青銅器(西周後期)