心斎橋コーヒ院研究所推薦 ネルドリップのいれ方

〜ドリップコーヒーの原点〜
【 考察その1 】


ネルフィルターのネルとは、起毛されたコットン生地の事で、服地などにも 使用されています。

吸水性・保温性にも優れ肌触りがよい事で知られています。

コーヒー用のフィルターとしては、コーヒーに含まれる「雑味」を通さず、し っかりと「ろ過」が出来るために以前から使用されてきました。

ネルフィルターには、長所と短所があります。



[ 長所 ]

 ・ろ過の精度が良いため、雑味のない、とてもマイルドなコーヒーに仕上がる。
 ・コーヒーに余分な香りや味を着けないので、ピュアなコーヒーが出来る。
 ・繰り返し使用できるので経済的である。
 ・ドリッパーを使用しないので、自分のリズムでコーヒーをたてる事が出来る。
 ・一度に大量のコーヒーを抽出出来る。

[ 短所 ]

 ・煮沸などの準備に時間がかかる。
 ・保存と管理が難しい。
 ・コーヒー抽出後にも手入れが必要である。
 ・ドリッパーを使用しないので、毎回味が変わる危険性がある。
 ・少量のコーヒーを作るには技術がいる。

抽出の自由度こそがネルドリップ式の長所であり、短所なのです。

ネルドリップ式と対照的なのが、ペーパードリップ式です。手入れも後かたづけも簡単で、分量を守れば、誰でも均一なコーヒーを作る事が出来ます。ペーパードリップ式で使用するドリッパーは、ほとんど手作業のネルドリップ式に比べ、一定の速度でコーヒーを抽出可能な、とても優れた器具なのです。
でも、気づかないうちに、使用した器具の臭いがコーヒーに移る事も考えられます。ペーパーにはペーパーの、エスプレッソマシンにはマシンの特有の臭いがあります。ネルフィルターの場合、使用方法さえ間違わなければ、コーヒーに余分な香りや味を着けない、ピュアでマイルドなコーヒーが出来ます。
「一度トライしたが失敗した。」「ネルフィルターをすぐにダメにしてしまった。」という話をよく聞きます。一般の消費者の方にとって、特に管理が大変そうですが、慣れてしまえば同じです。おいしいコーヒーを作るためには「手間暇」をかける事が大事なのです。おいしいコーヒーを作るために、ぜひネルフィルターで作るコーヒーのポイントをしっかりと押さえて、挑戦して下さい。

【 ネルフィルターの種類】

ネルフィルターは、1杯用、3杯用、5杯用、10杯用、20杯用、50杯用、100杯用があり、1〜20杯用までには取っ手が付いています。50杯用、100杯用はリングのみになります。

ネルドリップの補助器具には、「やぐら」と呼ばれるリング状のアングルがあります。
ドリップ用ポット
サーバー
計量カップ
コーヒー粉
【 準備編 】

・抽出に必要もの 

  ・メジャーカップ(人数分の粉を計量します)
  ・コーヒー粉
  ・沸かしたてのお湯
  ・ネルフィルター
  ・ドリップ用のポット(細口タイプ)
  ・コーヒーサーバーまたは、手鍋等でも可
  ・きれいな布巾やタオルなど
  ・あれば、ヤグラといわれる支柱
   (手で支える必要が無くなります)

新しいネルフィルターを使う際は、使用前に10〜15分程度煮沸してから 使用して下さい。これは、新しいネルフィルターに含まれている「のり」 成分を落とすためで、さらに少量のコーヒーの粉を入れて煮沸しますと、 コーヒーを抽出する際にとてもコーヒーになじみやすくなります。


煮沸後は、水道水でよく洗って下さい。後は、固く絞って下さい。
※ネルフィルターは、目詰まりを防ぐために、起毛してある方を外側にして使用することをお勧めします。

【 抽出編 】
  1. まず、湯を人数分よりやや多めに沸かして下さい。

  2. 出来上がりのコーヒーを熱くするために、使用器具はお湯に漬けるなどして温めておいて下さい。※出来ればネルフィルターにもお湯をかけて、温めておくとより熱いコーヒーが出来ますが、水分を事前にタオル等で取っておく必要があります。

  3. コーヒー1杯分の場合、メジャーカップ1.5杯分(約18g)計量して下さい。
    挽き加減は、ペーパードリップ式よりもやや粗めを使用して下さい。注1.

  4. 水分を取ったネルフィルターに、粉が平らになるようにコーヒーを入れます。
    沸騰したお湯を、ドリップポットに移します。この時点でお湯の温度は、95℃前後に下がりますので、ドリップに最適な温度になります。注2.

  5. 1回目注湯、お湯をゆっくりと粉全体に注ぎ、まんべんなくいき渡ったらそこで一旦止めます。サーバーに数滴落ちる程度で良いので、落としすぎに注意して下さい。コーヒーのおいしい成分を抽出しやすくするために、約20〜30秒程度蒸らします。

  6. 2回目注湯、コーヒー全体が膨らんだら、盛り上がった中心から「の」の字をを描くようにお湯をゆっくり注ぎます。ネルフィルターに近い粉の部分にお湯をかけますと、ネルフィルターを伝って、そのまま下に落ちてしまいますのでご注意下さい。この時点で、コーヒーのおいしい成分は、ほとんど抽出されてしまいます。

  7. 3回目注湯、表面の泡を消さず、お湯がすっかり落ちきらないうちに、残りのお湯を同じように注ぎます。注3.

  8. 4回目以降の注湯は、コーヒーの濃度を調節するためのものですから、落ちていくコーヒーの色を見ながら、杯数分の分量に達したら抽出完了です。ネルフィルター内にコーヒーが残っていても、サーバーからはずして終了します。注4.

  9. サーバーのコーヒーをカップに移して完了です。この時点で、少し温度が下がりすぎている場合には、サーバーを火にかけて少しだけ温め直して下さい。ただし、絶対にコーヒーを沸騰させてはいけません。せっかくの香りがすべて飛んでしまいますから・・・。
 

【 考察その2 】

落とし方には、色々な方法があるようですが、私はそう難しく考える必要は無いと思います。コーヒーの味の8割がたはコーヒーそのものの味で決まりますので、残りの10〜20%を抽出で補うものだと見ています。

一度きりでは、すべてはうまくいかないかも知れません。何度もトライして、味の変化やコツを覚えて下さい。また、抽出中は片手でネルフィルターをもう一方でドリップポットをしっかりと支える事になりますので、初めの内は疲れるかも知れませんね。やけどには、くれぐれもご注意下さい。

すべては、一杯のおいしいコーヒーを飲むための努力です。その努力は惜しまないという方はぜひ、トライしてみて下さい。新しいコーヒーの味が発見できると思いますから・・・。

【 後始末編 】

コーヒーを飲み終わったら後始末です。ネルフィルターが難しいといわれるゆえんは、その保存方法にあります。

1.使用後のネルフィルターに残っているコーヒーの粉を捨てます。

2.水道水で、よくもみ洗いします。金属以外のタワシでこすると布の中に詰まっている細かい粉もよく取れます。この時、絶対に洗剤や漂白剤は使用しないで下さい。2〜3回抽出後に一回は煮沸すると長持ちします。

3.コーヒー成分が取れましたら、水につかった状態のまま、冷蔵庫で保管します。ネルフィルターは、絶対に乾燥させてはいけません。使用後に、一度でも乾燥させますと付着しているコーヒー成分が酸化し、異臭を放つ様になります。そうなるともう使えません。また、ネルフィルター寿命は約50回の使用をめどにし、臭いが気になりだしたらすぐに新しいものと交換して下さい。

4.毎日使用しない場合でも、2日に1回は取り出して水洗いが必要です。

『おすすめ保存方法』

1.タッパウェアーなどの保存容器に水を入れ、その中で保存します。
2.ジップ付き袋に水を入れ、その中で保存しますと場所を取りません。
3.使用頻度が低い場合には、「2.」の方法で“冷凍保存”することをお勧めします。この場合、使用時に解凍作業が必要になります。

いずれの場合も、こまめに使用または洗浄しないと冷蔵庫の臭いが移る場合がありますのでご注意下さい。注5.

上記の保存方法が面倒な方は、毎回新しいネルフィルターをご用意下さい。
(^^)
その場合でも、最初の煮沸だけはお忘れ無く・・・。

注1.〈 珈琲粉の適量 〉

1杯分 18g (メジャースプーン1.5杯) 4杯分 48g (メジャースプーン4杯 )
2杯分 30g (メジャースプーン2.5杯) 5杯分 54g (メジャースプーン4.5杯)
3杯分 36g (メジャースプーン3杯 )  

お好みで増減して下さい。ネルドリップの場合、粗く挽いたコーヒー豆を多めに使用した方がおいしくできあがります。

注2.〈 お湯の温度 〉

ドリップポットで直接お湯を沸かしいてる場合は、一旦ポットを濡れた布巾等の上に置き温度を少し下げます。100℃のお湯は、コーヒーのおいしい成分を壊しやすくとげとげしい味に、またぬるすぎるとうまく抽出しきれません。


注3.ネルフィルター上のお湯を、すべて落としきらないように注意して下さい。白い泡の部分にはコーヒーの雑味成分が多く含まれていますので、落とすお湯の量をコントロールして下さい。

注4.コーヒー液の色は、黒褐色→褐色→薄茶色と変化していきます。最後は、には無色(お湯に近い色)に近づきます。

注5.ネルフィルターは、臭いにとても敏感です。洗剤はもとより、香水や石けんの臭いがコーヒーをダメにしてしまいます。