三人娘ヒストリー

 空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの元祖<三人娘>の登場は、芸能界における大きな革命であった。所属事務所やレコード会社の壁を乗り越えて、スクリーンでの競演や雑誌のグラビア展開を実現させ、成功に結び付いた初めての例といえるだろう。各々が押しも押されぬスタアであっただけに、関係者の苦労がしのばれる。

 ともと日本人は何かと物事を3という数字で括るのを好む民族である様だから、それが芸能の世界で試みられたのも当然であろう。三人娘に続いて、男性では平尾昌章(現・昌晃)、山下敬二郎、ミッキー・カーチスによる<ロカビリー三人男>、さらに水原弘、井上ひろし、守屋浩の<三人ひろし>が話題となる。そして女性でその形態を継いだのは、やはり中尾ミエ、園まり、伊東ゆかりの<ナベプロ3人娘>ということになるだろう。当初は園まりのポジションに第一プロの沢リリ子が置かれていたが、やがて渡辺プロダクション所属の3人となる。事務所が一緒ということもあって、映画での競演など活動の場は多かった。レコード会社が異なるため、さすがに一緒のレコーディング作品こそないものの、同じ曲をそれぞれがレコーディングして、シングル・リリースと云う好企画はあった。

 の後、同じレコード会社だった黛ジュン、奥村チヨ、小川知子がセールス上<東芝三人娘>として扱われたりはしたが、それほど広くは浸透せず、次なる三人娘の登場は、70年代に入ってから。アイドル第一世代の南沙織、小柳ルミ子、天地真理が<新三人娘>と呼ばれた。但し多分にマスコミ的な呼称の感が強く、3人での活動の記憶は稀薄である。その点では<花の中三トリオ>と呼ばれた、森昌子、桜田淳子、山口百恵の3人は年齢が一緒、同じ『スター誕生』からのデビューと云うこともあり、結束は固い。事務所が推進した昌子、百恵プラス石川さゆりの<ホリプロ三人娘>の変形版ユニットであった。

鈴木 啓之(音楽評論家)
 

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