>>ワキ文具店長 岸井祥司 大阪の下町で職人と出会う

2004年9月24日(金)

「大阪には、世界に誇るセルロイド万年筆の職人がいる。」
そう聞いたのは、先月のこと。
会いたくて、会いたくて、仲介人を通してアポをとってもらった。
そして今日、やっと会える。





仲介人と待ち合わせ、着いたのは大阪の下町生野区。焼肉街で有名な鶴橋を抜けて、住宅地に入っていった。

大阪の下町はゴチャゴチャしてますっ


着いた。


一見、普通の民家にしか見えない。「こんなところに、世界に誇る職人がいるのか?」ドキドキしながら、ドアを開けた。


ドアを開けると、満面の笑みで職人 加藤清社長と、加藤ご夫人が迎えてくれた。
まず目に入ってきたのは、作品の数々。
すばらしい軸の柄と、カラフルなカラーに目を奪われた。

←遠目ではわからないが、全て感動の逸品


一息つき、挨拶をすませ、取材を開始。


店長岸井(以下、キ)  加藤社長(以下、カ)

ちょっと本気で取材

他にも1975年製など、まるでワイン(笑)


一番奥の、一番右のケースに入っているのは、1965年製の作品。非売品である。この作品には、かなりの思い入れがあるそうで、淡々とストーリーを語ってくれた。

僕が生まれた年のやつ、に1本もらっちゃった♪
宝物にします!

作品について詳しく教えてもらいました。
作品は名鑑に載るほどの逸品!


キ「社長は、いつから万年筆職人になられたんですか?」

カ「せやな、1924年に親父が加藤製作所を作って、俺は生まれてからずっと職人のつもりやから、1927年としとこか」

キ「では、
職歴は77年になりますね。当時、この地域には沢山の工房があったと聞きましたが、今ではどうなんでしょう?」

カ「あらへん、あらへん。
もう誰もやってへんで。今は俺だけ、ラストワンやがな。当時は、この辺りにも100軒近く工房があって、1000人以上の職人がおった。」




キ「そうですか、では世界中見渡しても唯一最後のセルロイド万年筆職人になりますね。職業訓練所などで後継者を育てるような動きはなかったんでしょうか?」

カ「そんな暇あるかいな、
自分からしたくて来ないと職人なんてできへん

キ「では、少し質問を変えて、万年筆つくる工程で一番難しい作業はなんでしょうか?」

カ「気を使うのは全ての工程や、特にここが難しいなんてあらへん。難しい所があったら、職人なんてでけへんがな。
モノを作るのは口で作るんやない。腕でつくるんや





■エジプトにいた時に雑誌に掲載された!

キ「沢山の軸の柄とカラーに魅せられて感動したんですが、いくつ種類があるんでしょうか?」

カ「ざっと、主要なもんで50種類ぐらいやろな」

キ「1本作るのに、どれぐらいの時間をかけられるんですか?」

カ「そんなもん、数えたこともあらへんがな」

キ「どんな気持ちで作っていらっしゃるんですか?」





カ「イメージするねん。自分でどんな人に使ってもらいたいのか、イメージするんや。そこから、軸のカラー、重量配分とか考えて作るねん」

キ「なるほど、一人前の職人になるのにどれぐらいかかりますか?」

カ「軸で10年。デザインから、全工程を一人でやるには20年かかるな」

キ「社長は海外、特にヨーロッパでは有名人でミスターカトウの愛称で親しまれているようですが、外国ではどんなお仕事をされたのですか?」





■鍛冶道具は全て自作というから驚き!

カ「外国にはよく行った。今まで、50カ国はまわってきた。特に、ビスコンティ社の社長とはなかよくやらせてもらって、一時は下請けしていた。代表作の、「マンハッタン」、「ラグタイム」はわしの作品や。リビアと、イラクにはあわせて130万本の筆記具を届けたが、作るのに2年半かかって、しかも戦争やらで、陸路、航路とも届けるだけで大変やった。。。」



■この長いセルロイドを切って軸にします。

キ「色々なご苦労をなさってきたんですね」

カ「昔は、フランクフルトの空港までカバンさげて行き来してたが、もう年やからあかん。
フランクフルトは寒くてかなわんわ。ヨーロッパいかれへんようになってからは、ビスコンティの社長は怒ってたけどな(笑)」



キ「外国では、今でも加藤社長の作品を大切に使ってる方が多いそうですね」


カ「当時、エジプトのガバメント(政府)と、わしと、現地のHANS工房とで、3分の1ずつ費用を負担して、子供達に筆記具を贈ったことがある。最初はパーカー社に頼んでたみたいやが、高くて話にならんかったそうや。」



■夫婦で守るハンドクラフト万年筆!

キ「たしかに社長の筆記具は、万年筆にしては比較的安価ですね。時間と、技術からしても、ウン十万円はくだらないとおもいますが、何か意図がおありですか?


カ「
わしは、万年筆をみんなに使ってもらいたい。コレクターが引き出しに直してるのは、悲しいことや。沢山の人が、手軽に買えて使えるやつを作っていきたいんや。」



キ「すばらしいポリシーをお持ちなのですね。最後に、万年筆を作るということは、社長にとってなんですか?」



■もう僕は終始感動しまくりっ!

カ「みんな、好きな事やって、生きてたらいい。それが、ベリーハッピーやがな。わしは、ビル建てたろとかいう野心はサラサラあらへん。年やから、ヨーロッパから手を引いて、日本国内で細々やろうと思ったのに、こんな手作りが愛される時代が来た。早くゆっくり休みたいわ。老い先短いしな。」
■最後はマブダチになりました(笑)

キ「ありがとうございました。ワキ文具のお客様は、筆記具が大好きなので、きっと社長のペンを気に入ってくださると思います。僕も沢山の人に社長のペンを使ってもらいたいので、長生きしてくださいね!」


カ「そんなに数注文もろても、作られへんでー 勘弁してやー(笑)」

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