化学物質等安全性データシート(MSDS)
作成日 : 平成23年5月28日
改定日 :


製品名:鉛蓄電池用電解液


会社情報

会社名 :株式会社 ワイビーエー
住所 :東京都足立区青井3-37-35
担当部門 :商品企画開発部
電話番号 :043-239-6547
緊急時の電話番号 :043-239-6547
FAX番号 :043-215-4407


組成・成分情報

化学式又は構造式 :希硫酸 (H2SO4+H2O)
含有率 :42.5%
官報公示整理番号 :1-430(化審法)
CAS No. :7664-93-9


危険有害性の要約

分類の名称 :腐食性物質

危険性 :蓄電池内で発生した水素ガス及び酸素ガスにより、火気を近づける
      又はショートすることにより引火爆発の危険がある。

有害性 :皮膚に接触すると薬傷を起こし、目に入れば失明をすることがある。
      飲み込んだ場合は生命に危険を及ぼす影響が出ることもある。
      硫酸の蒸気又はミストを繰り返し吸入することにより、慢性の上気道炎
      又は気管支炎を起こす。また歯牙酸食症を起こすこともある。

環境への影響 :電解液で濃度が高いものは生物に影響を及ぼすことがある。


応急処置
吸入した場合 :被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で
          休息させること。
          直ちに医師に連絡すること。
          気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。

皮膚に付着した場合 :直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、又は取り去ること。
              直ちに医師に連絡すること。
              皮膚を速やかに洗浄すること。
              皮膚を流水又はシャワーで洗うこと。
              気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
              汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。

目に入った場合 :直ちに医師に連絡すること。
           水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて
           容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
           気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。

飲み込んだ場合 :直ちに医師に連絡すること。
           口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
           気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。

予想される急性症状及び遅発性症状 :気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。

最も重要な兆候及び症状 :腐食性、灼熱感、咽頭痛、咳、息苦しさ、息切れ、発赤、痛み、水泡、
                  重度の皮膚熱傷、重度の熱傷、腹痛、ショック又は虚脱。

医師に対する特別注意事項 :肺水腫の症状は2〜3時間経過するまで現われない場合が多く、
                   安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。


火災時の措置

電解液自体は不燃性であり助燃性もないが、蓄電池及び電解液取り扱い
場所等で火災が起こった場合は粉末消化剤、泡消化剤不燃性ガスの
消火器で消化すること


液の漏出時の措置

土砂、吸着マット等でその流れを止め、これに吸着させて取り除き、重炭酸ソーダ又は
消石灰で中和し大量の水で洗い流すこと。その際、保護メガネ、保護手袋、ゴム長靴
等の執拗な保護具を着用すること。


取り扱い及び保管上の注意

取り扱い

技術的対策 :「ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。

局所排気・全体換気 :「ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行う。

安全取扱い注意事項 :空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行うこと。
              接触、吸入又は飲み込まないこと。
              取扱い後はよく手を洗うこと。
              屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
              この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
              環境への放出を避けること。

接触回避 :「安定性及び反応性」を参照。

保管

技術的対策 :保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の
         設備を設ける。
         特別に技術的対策は必要としない。

混触危険物質 :「安定性及び反応性」を参照。

保管条件 :酸化剤から離して保管する。
       特に技術的対策は必要としない。
       容器を密閉して換気の良い場所で保管すること。
       施錠して保管すること。

容器包装材料 :国連輸送法規で規定されている容器を使用する。


暴露防止及び保護措置

管理濃度 :設定されていない。

許容濃度(ばく露限界値、生物学的ばく露指標):
日本産業衛生学会(2005年版) 1 mg/m3   最大許容濃度
ACGIH (2005年版)        TLV-TWA   0.2 mg/m3   A2(無機強酸ミスト中に含まれる硫酸)

設備対策 :この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
       気中濃度を推奨された管理濃度・許容濃度以下に保つために、工程の密閉化、
       局所排気、その他の設備対策を使用する。
       高熱工程でミストが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度・許容濃度以下に
       保つために換気装置を設置する。
       高熱工程でガスが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度・許容濃度以下に
       保つために換気装置を設置する。

保護具

呼吸器の保護具 :適切な呼吸器保護具を着用すること。
            ばく露の可能性のあるときは、送気マスク、空気呼吸器、又は酸素呼吸器を着用する。

手の保護具 :適切な保護手袋を着用すること。
         二トリルゴム及び塩ビは適切な保護材料ではない。ネオプレンが推奨される。
         飛沫を浴びる可能性のある時は、全身の化学用保護衣(耐酸スーツ等)を着用する。

眼の保護具 :適切な眼の保護具を着用すること。
         化学飛沫用のゴーグル及び適切な顔面保護具を着用すること。
         安全眼鏡を着用すること。撥ね飛び又は噴霧によって眼及び顔面接触が起こりうる時は、
         包括的な化学スプラッシュゴーグル、及び顔面シールドを着用すること。

皮膚及び身体の保護具 :適切な保護衣、顔面用の保護具を着用すること。
適切な顔面用の保護具を着用すること。
一切の接触を防止するにはネオプレン製の、手袋、エプロン、ブーツ、又は 全体スーツ等の不浸透性の防具を適宜着用すること。
しぶきの可能性がある場合は、全面耐薬品性防護服(例えば、酸スーツ) 及びブーツが必要である。

衛生対策 :取扱い後はよく手を洗うこと。


物理及び化学的性質

: 外観; 無色透明の液体1)
: 密度(比重); 1.8356(15℃/4℃)3)
: 沸点; 340℃1)
: 融点 凝固点; 10℃1)
: pH; 0.3(1N) 1.2(0.1N)  2.1(0.01N)2)
: 粘度; 27mPa・s5)
安定性及び反応性

安定性 :水と急激に接触すると多量の熱を発生し、酸が飛散することがある。水で薄めて生じた 希硫酸は、各種の金属を腐食して水素ガスを発生し、これが空気と混合して引火爆発 することがある。
吸湿性がある。

危険有害反応可能性 :多くの反応により火災又は爆発を生じることがある。
強力な酸化剤であり、可燃性物質や還元性物質と反応する。
強酸であり、塩基と激しく反応し、ほとんどの普通金属に対して腐食性を示して 引火性/爆発性気体(水素)を生成する。
水、有機物と激しく反応して熱を放出する。

避けるべき条件 :加熱すると、刺激性又は有毒なヒュームやガス(イオウ酸化物)を生成する。

混触危険物質 :可燃性物質、還元性物質、強酸化剤、強塩基、混触危険物質などとの接触に注意する。

危険有害な分解生成物 :燃焼の際は、イオウ酸化物などが生成される。


有害性情報

急性毒性 :経口:ラットLD50 値:2140mg/kg 6) 及びヒトでの経口摂取(摂取量は不明)
による死亡例の報告があるとの記述 7) に基づき区分5とした。
飲み込むと有害のおそれ(経口)
経皮:データなし
吸入(蒸気):データなし
吸入(ミスト):ラットLC50 値(4時間ばく露):0.375mg/L 6) 及び
(1時間ばく露):347ppm(4時間換算値:0.347mg/L) 6) に基づき、区分2とした。
吸入すると生命に危険(ミスト)

皮膚腐食性・刺激性 :濃硫酸のpHは1以下であることから、GHS分類基準に従い腐食性物質と判断され 、区分1A-1Cと分類した。本シートでは安全サイドより区分1Aとして取り扱っている。
重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷

眼に対する重篤な損傷・刺激性 :ヒトでの事故例では前眼房の溶解を伴う眼の重篤な損傷が認められたとの記述 7) 、 ウサギの眼に対して5%液で中等度、10%液では強度の刺激性が認められたとの記述 6) 及び本物質のpHが2以下であることから区分1とした。
重篤な眼の損傷

呼吸器感作性又は皮膚感作性 :呼吸器感作性:データなし

皮膚感作性:硫酸の皮膚感作性に関する試験データはない。硫酸は何十年と工業的に 利用されているが、皮膚刺激作用による皮膚障害がよく知られている一方、皮膚感作性 の症例報告は皆無である。
体内には硫酸イオンが大量に存在する(血清中の硫酸イオンは〜33mmol/L 、 細胞内にはその50倍)が、アレルギー反応は起こらない。金属の硫酸塩の アレルギー性試験では、金属によるアレルギー性陽性となることはあっても、 硫酸イオンでは陰性となることは、硫酸亜鉛での陰性の結果から推定される。
以上の結果から硫酸はヒトに対してアレルギー性を示さないとの結論が得られる、 との記述 8) から、区分外とした。

生殖細胞変異原性 :in vivo では生殖細胞、体細胞を用いたいずれの試験データもなく、in vitro 変異原性試験 では単一指標(染色体異常試験)の試験系でのみ陽性の結果がある 7) が、他の指標では 陰性であることから、分類できないとした。

発がん性 :硫酸を含む無機強酸のミストへの職業的ばく露については、IARCでグループ1 9) 、 ACGIHでA2 10) 、NTPでK 11) に分類されていることから、IARCの評価及び 最近のNTPの評価を尊重し、区分1に分類されるが、硫酸そのものについては、 DFGOTでカテゴリー4に分類している 12) 他、いずれの機関においても発がん性の 分類をしていないことから、分類できないとした。

生殖毒性 :ウサギ及びマウスでの胎児器官形成期に吸入ばく露した試験では、母獣に毒性が 認められない用量では、両種ともに胎児毒性及び催奇形性は認められず 6) 、また、 慢性毒性試験及び発がん性試験においても雌雄の生殖器官への影響は認められず、 刺激性/腐食性による直接作用が主たる毒性であることから、生殖毒性を示す懸念はないと 判断されている 6) ことから、区分外とした。

'特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露) :ヒトでの低濃度の吸入ばく露では咳、息切れなどの気道刺激症状が認められており 12) 、 高濃度ばく露では咳、息切れ、血痰排出などの急性影響のほか、肺の機能低下及び繊維化、 気腫などの永続的な影響が認められたとの記述 7) 及びモルモットでの8時間吸入ばく露で 肺の出血及び機能障害が認められたとの記述 7) から、区分1(呼吸器系)とした。
呼吸器系の障害

特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)  :ラットでの28日間吸入ばく露試験では区分1のガイダンス値範囲で喉頭粘膜に細胞増殖が 認められ 6) 、モルモットでの14〜139日間反復吸入ばく露試験では区分1のガイダンス 値範囲内の濃度で鼻中隔浮腫、肺気腫、無気肺、細気管支の充血、浮腫、出血、血栓などの 気道及び肺の障害が 7) 、さらに、カニクイザルでの78週間吸入ばく露試験では、 肺の細気管支に細胞の過形成、壁の肥厚などの組織学的変化が、区分1のガイダンス値の
範囲の用量(0.048mg/L、23.5Hr/Day)で認められた 7)ことから、区分1(呼吸器系)とした。
長期又は反復ばく露による呼吸器系の障害

吸引性呼吸器有害性 :データなし


環境影響情報

水生環境急性有害性 : 魚類(ブルーギル)の96時間LC50 = 16-28mg/L 13) から、区分3とした。
                水生生物に有害

水生環境慢性有害性 : 水溶液が強酸となることが毒性の要因と考えられるが、環境水中では緩衝作用により
                毒性影響が緩和されるため、区分外とした。


廃棄上の注意

そのまま廃棄せず、消石灰などで中和してから「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
にしたがって廃棄すること。
廃液・容器等の廃棄を委託する場合は許可を受けた産業廃棄物収集運搬、処理業者と
それぞれ委託契約をしなければならない。
排水処理、償却などにより発生した廃棄物についても、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
にしたがって処理を行うか、委託すること。
必要な保護具を着用して行うこと。


輸送上の注意

国際規制
海上規制情報 : IMOの規定に従う。
UN No .:1830
Proper Shipping Name :SULPHURIC ACID
Class :8
Packing Group :II
Marine Pollutant :Not applicable
航空規制情報 : ICAO/IATAの規定に従う。
UN No .:1830
Proper Shipping Name :Sulphuric acid
Class :8
Packing Group :II

陸上規制情報 : 毒劇法の規定に従う。

国内規制
海上規制情報 : 船舶安全法の規定に従う。
国連番号 :1830
品名 :硫酸
クラス :8
容器等級 :II
海洋汚染物質 :非該当
航空規制情報 : 航空法の規定に従う。
国連番号 :1830
品名 :硫酸
クラス :8
等級 :II

特別の安全対策
輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、
荷崩れの防止を確実に行う。
荷崩れの防止を確実に行う。
食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
重量物を上積みしない。
移送時にイエローカードの保持が必要。
他の危険物や燃えやすい危険物に上積みしない。
他の危険物のそばに積載しない。
適用法令

労働安全衛生法 :名称等を通知すべき有害物
(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)
(政令番号 第613号)
腐食性液体(労働安全衛生規則第326条)
特定化学物質第3類物質
(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第6号)

労働基準法 :疾病化学物質
(法第75条第2項、施行規則第35条別表第1の2第4号)

毒物及び劇物取締法 :劇物
(法第2条別表第2)

船舶安全法 :腐食性物質
(危規則第2,3条危険物告示別表第1)

航空法  :腐食性物質
(施行規則第194条危険物告示別表第1)

大気汚染防止法  :特定物質
(施行令第10条)


その他の情報

参考文献
1) ICSC (J) (2000)
2) HSDB (Access on Feb 2006)
3) Ullmanns (E) (5th, 1995) A25: p.635-642
4) SRC (Access on Feb 2006)
5) 溶剤ポケットブック (1994) p.815-818
6) SIDS (2001)
7) ATSDR (1998)
8) SIDS (1998)
9) IARC (1992)
10) ACGIH (2004)
11) NTP (2005)
12) DFGOT (vol.15, 2001)
13) SIDS (2003)


災害事例

(1) 硫酸工場で、定期修理が終わったので、総合試運転を行っていたところ、フランジのボルトが
まだ締め付けてなかったため、硫酸が噴き出して薬傷を負った。
(2) 硫酸ポンプの修理ができたので、これを取り付けようとしたがフランジが合わないので、
取付穴の心合わせのため、ビニル管を無理に動かしたところ、ストップ弁の取付個所から折れ、
真下で作業していた者が硫酸を浴びた。
(3) 石油工場で濃硫酸がしみ込んだボロ布と廃油、ヒマシ油、切削油などがしみ込んだ布を
一括して廃棄したため、白然発火した。
(4) 薄液(原子炉廃棄物を固形化し処理するもの)注入タンクまで硫酸を圧送するとき、
硫酸が流れなかったため、バルブを点検しゆるめたところ、硫酸の流出が激しくなりバルブを
閉めたところ、霧状に硫酸が噴き出し被災した。
(5) 硫酸貯蔵タンク移転作業で供給管内に沈着したかすをハンマ−でたたき落としていた時爆発が
起こり2名が火傷を負った。かすの中の亜硫酸塩が爆発の原因と考えられる。
(6) 設備工事を行っていた工場内で、トラッククレ−ンを走行中ジブが硫酸移送用配管に接触し、
破損箇所から流出した硫酸により薬傷を負った。
(7) 硫酸希釈タンクの外壁塗装の準備でサンダ−がけをしていたところ、上部の濃硫酸滴下閉止
フランジがはずれ濃硫酸が漏れ、これを浴びて被災した。