竹の子として芽吹き、二ヶ月で身の丈を調え、自らの落ち葉を養分とし、三〜四年の熟成の時を経て、その身を成す。
時として嫌われ者に甘んじながらも、苦しむ人々を救いたいとの一心で、なおも繁茂し、活用されることを訴え続ける竹。
その『竹の心』の声に耳を素直に傾けることにより、私たちナファ生活研究所は、やさしき『竹の心』を形にして、皆様の元にお届けしてまいります。
(株)ナファ生活研究所
代表取締役 相田雅彦
> 竹繊維との出会い > 竹繊維の持つ抗菌性の発見 > 医療現場の現状 > 竹繊維の価格
> 竹はマジシャン > 竹繊維のブランド『竹布』の誕生 > 竹布の生産背景 > 「竹布」の誕生と役割
> 【竹布物語】について
私が竹繊維に初めて触れたのは2000年の春、中国・上海の友人に依頼し、ようやく出来上がった初の竹の原綿サンプルを見せられたその時です。
当時の私は、その一握りの綿に秘められた価値と役割を十分には理解できませんでした。
ただ、漠然と絹のような光沢を放つ竹の綿に触れながら、心地よさとともに、この成長の早い竹で織物が出来れば地球環境の面からも素晴らしいことだなぁ、しかし何故、今まで竹は「筍・メンマ」や「竹工芸品」としてしか活用されてこなかったのだろうと、不思議な気がしました。
帰国後、竹繊維の資料を特許庁や国会図書館で探しましたが、ほとんど見つからず、あったのは物理的な製法(つまり竹ひごを限りなく細くした)糸のみでした。奇異な思いにとらわれながら竹繊維の役割を考え続けました。
その後、度々、中国へ行き開発を進めながら、紡績糸を持ち帰り、(財)日本食品分析センターにてMRSA(院内感染菌)での抗菌テストを行いました。その結果は、検査官が驚いて、電話をかけてくるほどのものでした。4万個あった菌がなんと完全に死滅してしまったのです。2001年10月のことでした。
2002年の春、私は「竹繊維性抗菌布帛」という特許を出願しました。竹が本来的に持っている抗菌力は、特殊な製法により、初めて損なわれることなく保持できることが発見できたからです。さらに、2003年10月、その後の研究データを加え、再び「抗菌性を有する竹パルプ、竹を原料とするセルロース繊維及びこれらの製造方法」という特許を出願しました。
この中では、パルプ・原綿・糸・フィラメント・織物・編物・不織布すべての生産工程での産品の抗菌性を謳ってあります。
現在、医療現場で主として使用されているガーゼは綿です。綿は衣料品を始めとし、私たちの生活の中で最も身近な繊維です。
しかし、聞くところによると全世界の農薬使用量の多くは綿の栽培に使用されているとのことです。ショッキングな話ですが、それだけ綿の栽培には手間がかかるということでしょう。
無農薬で栽培されたオーガニックコットン製品が非常に高い価格であるにも関わらず、市場に受け入れられているのも、薬品漬けになっている普通の綿製品にアレルギー反応を示す人が多くなっているということだと思います。
そして、皮膚に対する親和性ということでも、直接肌に触れる部分には静電気を生じる合成繊維は使用しない方がいいので、コストの面からも天然繊維の綿が使用されているのだと思います。
私たちは、世界中の医療現場に竹繊維で作る衛生材料を送り届けようと考えています。治療に使うガーゼは、洗って再利用するというわけには行きません。患者1人に何枚も使い捨てなければなりません。
大切なポイントは2つあります。1つは、原料から製品になるまでの消費エネルギーの総量(ここでいうエネルギーとは、地球的環境負荷と人的負荷)が少ないこと。2つ目は、医療費を少なくするためのコスト(価格)の問題です。
3年あまり前、竹は原綿(紡績の前段階)で綿の3倍していました。しかし現在は、その差を20%まで縮めることが出来ました。平地で栽培する綿と山間部で収穫する竹を比較すると、採集効率では綿が絶対的に有利です。しかし、農薬・人件費・環境負荷などの消費エネルギーの総量という観点から判断すると、竹繊維は近い将来、需要の増大により、綿と並び、綿の価格を下回ることが出来ると私たちは確信しています。
竹は誰もが知っているように、毎年筍として発芽し、3年で成木となります。成長期には1晩に1メートル以上も伸びる、大変生命力の強い植物です。竹の節の上にある成長帯では、何と1秒間に9万個の細胞が作られているといわれています。毎年毎年種を蒔く必要もなければ、農薬を散布し肥料をあげる必要もありません。
人は竹の成長を眺め、成木のみを利用すればよいのです。3年物のみ上手に管理しながら伐採していくことで、今ある竹資源を全く減らすことなく活用することができるのです。竹はまるでマジシャンのようです。このように素晴らしい素材が他にあるでしょうか、まさに大地が私たち人類に与えてくれた贈り物です。
綿の2倍の吸湿性、さらに消臭性・抗菌性・シルクのような肌触り、抗帯電性、竹繊維にはこうした特性があります。「綿」は綿でなければならない製品、「木」は木を使うに適した製品があります。今後は無理に活用するのではなく素材の特性を生かし、かつ環境を考えた物づくりが必要です。成長するのに永い年月を必要とする木を消耗品である紙に使ってはいけないのです、資源のなくならない竹を代替コットン、代替紙パルプとして大いに普及させたいと私たちは考えます。
2003年は、竹繊維にとって元年の年となりました。数社のメーカーが竹繊維の特性に着目し、製品化を行ってくれました。商社を経由し、原綿は紡績に回り、他の繊維と混紡し、さまざまな生地になるわけですが、極端な例ですと、5%の竹繊維の混紡で抗菌性を謳う製品が2003年夏にみられました。
私たちは、抗菌テストの結果により、十分な抗菌力を持たせるためには50%以上の混率が必要と判断しています。それゆえ、竹繊維の機能性を重視した製品と目新しさのみで竹繊維を少量混紡した製品との差別化の必要性を感じました。
私たちは『竹布』という商標を付し、この数年その普及に努め、竹繊維の認知度も上昇しました。2006年5月には米国サンタモニカでのLOHASにも参加をし、米国でのデビューを果たしました。
まず生産工程ですが、簡単に説明しますと、原料(竹)→パルプ→繊維(原綿)→糸→生地となります。原料の竹は、中国・四川省との契約で安定供給を受けています。
原料の竹は約200種類の中から繊維素の量や抗菌性などを判断基準に厳選した材料を使用しています。パルプ・繊維化の段階で使用する溶剤は、繊維素を保護するために重要な役割を果たしますので、特殊なものを使用していますが、環境への配慮も十分に行っています。
残念ながら現時点では、100%の溶剤リサイクルが、機械設備上できておりませんが、現在、生産の効率化に取り込んでいますので、近い将来、溶剤の100%リサイクルを実現します。
その時点で竹布には、製品の品質と環境を配慮したエコ性において世界NO.1竹繊維の称号が与えられると確信しています。
私たちは、竹繊維製品のブランドを「竹布」と名付けました。「竹布」のもつ最大の特徴は、竹の持つ天然の抗菌力を保持しているところです。
雑菌の増殖を防ぐ、その力は、ガーゼなどの医療衛生及び介護用品、抵抗力の弱い赤ん坊のためのベビー用品、その他、人の肌に直接触れるスキンケアを目的とするあらゆる製品に生かされるべきと考えています。
私たち原料メーカーの責務として、あくまでも竹繊維100%での物づくりに努め、ユーザーには、この「竹布」マークがつけていれば〈安心〉と思っていただけるように妥協のない物づくりで信用を築いてまいります。
「人が最も痛み苦しんでいる、その時に、傷にそっと寄り添い、ただ快癒を祈る一枚のガーゼ」。この竹繊維を作る原点となった思いを胸に、医療・衛生用品、そして基礎生活用品を1点ずつ、心を込めて作らせていただき、そして次の大きなテーマである「紙」の開発へとナファは進んでまいります。