今回は親御さんが、「この痒みはアトピー性皮膚炎じゃないのかな?」と、
少しでも早く気が付かれ病院に行かれるきっかけとなれば良いと思いお話しさせていただく事と致しました。

なぜ早く病院に行ったほうが良いのでしょうか?
アトピーにおいては、
様子を見ていれば見ているほど、時間が経てば経つほど、悪化傾向にあるといってもよい疾患
だと言えるからです。
どのように悪化していくのかといえば、今までやこれからのお話でご理解いただけるものと思います。
また、早期における的確な診断と的確な予防指導の下において、ある種の治療やある種のお薬、あるいは的確な生活指導により悪化することを抑えることができたり、あるいは症状の軽減が可能な場合も存在すると思っているからです。
ではそれらを踏まえお話しさせて頂きたいと思います。





アトピー性皮膚炎は今までお話しさせていただいたように、
生まれもってある種の抗原に対してのアレルギー反応を持っている。
言い換えれば、生まれつき特定の抗原に対してアレルギー反応をすみやかにおこしてしまう身体である
といっても過言ではないと思っています。
親御さんもお子さん自身も誰も何も悪くないのに・・・・。そんな疾患の一つではないでしょうか。
ですが、アトピー性皮膚炎であったとしても、少しでもその症状が出ないように、
食事や生活環境などを留意することでアトピー症状発現の遅延や緩和ができるのではないか。とも思っています。
ただ、口では簡単に言えますが、体質がそうであるかないかが分からないうちからアトピーだ、アレルギーだと思い、生活をさせていくのは並大抵のことではないでしょうし、お子さんにとっても窮屈な思いをさせることなど計り知れないものがある事は重々理解しているつもりです。
そこで、その中においてわんちゃんの種類(品種好発性:アトピーになりやすい犬種)や親などの家族歴を知る事も方法の一つかと思っています。

では、お話しさせて頂きます。まず、大きな項目として、
以下の症状のうち最低でも3つ以上があてはまる場合はアトピー性皮膚炎と思ってもよいとされています。


(1)掻痒(必要に掻く)
(2)アトピー性皮膚炎における典型的な形態を示す。
アトピー性皮膚炎における典型的な場所に分布している。(以前のお話を参照)
下記において何らかの皮膚異常が認められる。
・顔面
・指趾
・足根関節の伸側面
・手根関節の屈側面
・その他
(3)慢性皮膚炎(常に皮膚炎を起こしている)
(4)慢性再発性皮膚炎(同じような場所が治ったかなと思ったらまた同じように悪くなる)
(5)アトピーになっている血縁関係が存在する(家族歴:両親・兄弟姉妹など)
(6)わんちゃんの種類がアトピーになりやすい(両親もしくは片親)品種好発性素因をもっている。
品種好発性素因があるものとされているのは、
・リトリバー系
・テリア系
・スパニエル系
・柴犬
・秋田犬
・シャーペイ
・チャウチャウ
上記などがアトピーを起こしやすいグループと
されているようです。
私は個人的にシーズーもその中に入るのではないか
とも思っています。


次に小さな項目として、
典型的(上述のよう)な状態が見受けにくいアトピー性皮膚炎において獣医師が診断をする場合。
(これは獣医さんへの事柄かもしれませんが、一部を除いてはこんな事も考え診ているんだと思っていただくだけでよいのではないかと思っています)
以下の症状のうち最低でも3つ以上があてはまる場合はアトピー性皮膚炎と思ってもよいとされています。

A.3歳以前の発症を認める(特に1歳未満であればより高い確率になる)
B.顔面の紅斑を認める
C.爪の基部周辺の皮膚に炎症を認める
D.両側性に結膜炎
E.膿皮症を認める(浅在性でブドウ球菌の感染による)
F.多汗を認める
G.吸入抗原に対し即時的反応を認める
H.アレルゲン特異的IgGdの上昇を認める
I.アレルゲン特異的IgEの上昇を認める
※A〜Iにおいては参考程度にとどめて頂ければよいと思います。

親御さんにおかれては(1)〜(6)における事柄を念頭におかれることをお勧めいたします。
なぜならば、(1)〜(6)はアトピー性皮膚炎においての基本的な所見であり、
A〜Iはわずかな所見といっても良いかと思っているからです。
もちろん皮膚病として慢性化した場合においてはわずかとはいっていられない状態になることも少なくはありません。




では、同じように痒みを(掻痒)をともない
アトピー性皮膚炎と区別しておかなければならないものにはどのようなものがあるのでしょう。
アトピー性皮膚炎において類症鑑別が必要となってくるのが
・ノミアレルギー性皮膚炎
・食物アレルギー
・接触性皮膚炎(刺激性・アレルギー性)
・疥癬症
・毛包炎
・膿皮症(浅在性を含む)
・ホルモン性皮膚炎
・その他


が主にあげられるように思います。
これらは一般的な血液像や尿検査などにおいては結果に著変はない(一般的な検査ではほとんど判別がつかない)とされています。
そのため、今までお話しさせて頂いた細やかな血液検査を実施するのですが、
通常において(1)〜(6)を主軸に上述の様々な事柄を加味し診断につなげていくと思っていただいても良いのかもしれません。

いわゆる典型的なアトピー性皮膚炎の病歴を持ち、典型的な発症部位や状態(慢性再発性・慢性皮膚炎)などから診断をくだせる場合も少なくはないのではないでしょうか。
その後発症時のIgEの上昇を確認し断定につなげるように思います。

では類症鑑別するには一般的な方法としてどのようなものがあるのでしょうか。
一つの方法としては、それぞれの疾患を院内検査などでひとつひとつ消去してく、いわゆる消去法において疾患を絞り込むというやり方があります。
もちろん、アトピーの疑いが濃くなった場合、血液検査による確認(IgEその他)や抗原の特定を行いますが、
今までお話しさせていただいた内容などを、
患者さんに事細かくお伺いすることが近道であることは言うまでもありません。
費用のかかる検査をしなくてもよい場合があるのではないかと思っています。
もちろんその場合は親御さんと獣医師との信頼関係が大きく関わってくることと思います。


次回は
アトピー性皮膚炎における全体像をお話しさせて頂きたいと思っています。

今年も一年間お付き合いくださりありがとうございました。
新しい年も宜しくお願いいたします。
お子さんや親御さん、皆様方におかれましては
良き年をお迎え下さいます様
そして健康で元気にお過ごしいただける良き年でありますよう
心から希望いたします。
We wish you Happy Holidays and much success in the New Year.