今までに”涙やけ”は、
・反射性流涙
・非反射性流涙
に大別できるとお話しさせて頂きました。

「涙やけ（流涙症）は涙が流れ落ちる事を意味し、
皮毛および皮膚を茶色く染め、時には湿性の皮膚炎を引き起こす原因ともなる。」
これをもって考えれば
反射性流涙においては原因の除去が必要となってきます。
（涙やけ�△鮖仮�して下さい。それぞれに治療法が存在します。）
そして、反射性流涙、すなわち過剰分泌でないとすると、
涙排泄管の異常・非反射性流涙を考慮しなければなりません。
これはほとんどが外科的処置を含めたものとなってきます。
もちろん排泄路の正常な解剖学的関係※1を作りだすのが理想になってくるのですが、難しいとされています。
反射性流涙においても非反射性流涙においても原因を見誤った場合、
たとえば、流涙症点眼薬を使用した場合においても、
角膜が乾燥したり、疾患が悪化する場合も考えておかなければならならず、
外科的処置を施した場合においては、少なからずともなんらかの後遺症が存在する事も
念頭に置かなければならないように思います。
また、点眼薬等を使用する場合においては作用機序※2を熟知しておかなければならないのは言うまでも無いことだと思っています。


※流涙症点眼薬（人用医療薬）
表面麻酔薬の一種であり、涙液分泌抑制においては
表面麻酔剤点眼による結膜及び角膜の知覚麻痺並びに
三叉神経反射弓の一過性遮断※3 4 5によるものと考えられている。

（分泌を抑制する事は何らかの機能を抑制する事ではないでしょうか。 もちろん必要な場面がある事は十分理解しておかなければならない事で、 適応する場合は他に及ぼす影響を十二分に考慮しなければならない事もご理解頂ける事と思います。）

では、今までお話しさせて頂いた様に、
お付き合いできる”涙やけ”にはどの様な方法があるのでしょうか？





ここからは、私が行っている方法と
その方法が他の疾患に及ぼす影響をお話しさせて頂きます。

勘違いしていただきたくないのは、
身体によけいな物（薬など）は入れない方が良いという事です。
それは、良い薬であっても副反応は必ず存在すると思っているからです。
慎重に検査し、その子その子の体質を理解し、
定期的な経過観察をおこたらないことが必要不可欠となってくる事をご理解いただきたく思っています。

ではお話しさせて頂きます。
考え方としては

・涙量が治療により左右されない。（特に涙量を減少させない）
・長期の使用により副反応の出現が少ないもしくは無い事の方が多い。
・涙液成分に変化をもたらす事が無い。
・他疾患に影響が無い。（他疾患に良い影響が得られる方が理想である）
※他疾患：これは前Noを参照して下さい。

これらを満たすことが重要となってくるように思います。　

眼においては乾燥することが最も良くない事であり、
流涙においては人の場合、不都合な事があると思います。
犬においては余り不都合になって来る事は少ない様に思います。
ですから流涙としては二次的に起こる現象の抑制を考えても良い様に思います。
ただし、流涙に至る一次原因※6が重要になる事は言うまでもありません。 これからお話しさせて頂く方法も、
一次原因を取り除く事が出来れば、その必要が無い事をご理解して頂いた上で耳を傾けて頂きたく思います。

その方法とは

犬に確立されている方法だと理解していますが、
一日一回飲ますという経口投与法になります。
この医療薬は
上述における考え方の項目を満たしており、涙量を減少させることが無く
染色性蛋白※7と良く結合し、[涙やけ]といわれている茶褐色に染めることを抑制してくれます。
しいて言えば
その場での細菌・酵母・糸状菌などのバイ菌の繁殖を抑制してくれているものと思います。
その様に思えるのは、他疾患（前No)においても
それらのことが言える状態（症状）に変化するからに他なりません。

これらの変化や影響については
次回にお話しさせて頂きたいと思っています。


【語句説明】
※1　解剖学的関係
　通常（正常な）のあるべき状態。
※2　作用機序
　そのものが作用するにあたり、起こりうる現象がどの様な経過・経緯で発現するのかのプロセス。
※3　三叉神経反射弓
　三叉神経（涙を出させる作用を有する）の集まっている中継点。
※4　一過性遮断
　一時的にブロックする（止める）が元に戻る。
　[薬効が無くなると元に戻る。]
※5　三叉神経反射弓の一過性遮断
　三叉神経を伝って起こる現象を一時的にとめること。
　例えば、流涙症点眼薬として表面麻酔剤を点眼使用する事により、
　涙量を減少させる効果があるが、その効果が切れると点眼前の状態に戻る。
　この涙を減少させる効果が一時的かつ可逆的である事を一過性遮断という。
※6　一次原因
　症状を引き起こす最初の原因。
　（症状は最初の原因の上に立って様々な要因が積み重なり発現する場合がある）
※7　染色性蛋白
　涙の成分は以前にお話しさせて頂いたと思いますが、
　例えば免疫グロブリンも一つの蛋白であるが、
　今回は涙やけを起こす原因となる蛋白のみを意味すると思って頂いても良いのではないでしょうか。