涙やけ!
お悩みになっておられるワンちゃんの親御さんも多い事と思います。
もちろん、ネコさんにも見受けられます。
が、圧倒的にワンちゃんの親御さんのご質問が多い様に思われます。
なぜでしょう?

流涙量(涙の量)や涙の構成成分比などの違いもあるでしょうが、
目立つ体毛色、薄色系統がワンちゃんに多い事と、
近寄ってゆっくり観察できる時間がワンちゃんの方が多い(涙やけ臭なども含め)という点などからではないかと思います。
もちろん涙やけが目立たない濃色系のお子さんにもたくさん見受けられます。
それらのお子さんの親御さんは[目やに]と思われている方がほとんどの様に思います。
その場合、内眼角(目がしら)周辺の皮膚がただれた様になり、
「単純に皮膚がただれたんですね」では余り関心しません。
以前にもお話しさせていただいた様に、
●なぜただれたのか?
「涙で、眼やにで、ただれたんです」で良いのでしょうか?
これでは皆様もすでにお分かりになっている事ではないでしょうか。

●今後ただれない様に(再発しない様に)するには!
が、大切な事に気付いていただきたく思います。

親御さんが気になされなくても、これからお話しさせて頂くことで、
さらに重要な事が隠れているかもしれないという事を感じて頂きたく思っています。





では[涙やけ]ってなんなんでしょう?
単純に言えば「涙がこぼれて毛や皮膚を茶色く染める。」でしょうが、
ただここで、二つの疑問点が出て来ます。
一つはなぜ涙がこぼれるのか?
二つ目はなぜ涙が毛や皮膚を茶色く染めるのか?
この二つについて視点を変えて考えてみると、
その子の気を付けなければならない点が出てくる場合もある様に思います。
この疑問点をお話しさせていただく前に
少しだけお時間を頂きお話しさせて頂きたい事があります。

皆さんは手足が茶色くなったり、指先が茶色くなったり、靴下をはいている様な子たちを見た事がありますか?
これも涙やけ同様、手足を舐める事によって毛や皮膚が染まってしまうために起こります。
舐める原因は今回はさて置き、涙やけと染まる機序は同じである様に思います。
ですから私は[唾液やけ]とお話ししています。
お耳が悪いお子さんの耳内毛(耳導奥に生えている毛)も茶色く染まっています。
これも染まる機序は同じ様に思います。
そして、これらの場所を臭ってみて下さい。
涙やけにせよ唾液やけにせよお耳にせよ、良い香りはしないと思います。
悪臭の場合がほとんどだと思います。
悪臭がする様な場合は身体にとって悪い場合が多い!
と思って頂いても良い様に思います。





根本的な原因を排除する事が最も大切で必要ではあるのですが、体質や原因を取り除くことが困難な場合、
あるいは、しかたなくお付き合いしなければいけない場合などは、どの様な方法でお付き合いをすればよいのでしょうか?
以上の点も頭の片隅において頂き、これからお話しさせて頂く事に耳を傾けて頂きたく思います。
※今回は涙やけにおいてのお話とさせて頂き、唾液やけや、お耳についてとは当てはまらない場合がある事にご注意ください。

涙やけは、流れ出た涙によって皮毛および皮膚が褐色に染まった状態を言うように思います。
よって流れ出る涙が二次的原因とされ、(一次的原因があって涙が流れ出る:これが大切だと思います)
流れる涙の症状(病気)ということから、
[流涙症]と呼ばれ、涙やけと同等に扱われています。
ですから、目の下や周りが茶色いお子さんを見かければ、
[流涙症]ですね!」と言っても過言ではないと思います。
では、[流涙症]の教科書的概念をまずお話しさせて頂きます。(私なりに噛み砕いてお話し致しますが
事細かくお知りになりたい方は、専門的にお書きになられたホームページなどでご確認ください。)





概念
顔面に涙が異常に流れ落ちることを意味し、
そしてその涙液が原因で眼周辺部(内眼角周辺)の皮毛および皮膚に
おこる色素沈着を引き起こし、ときには湿性の皮膚炎を起こさせる。

原因
大きく分けて二つに大別できる。
●反射性流涙
 すなわち過剰分泌によっておこる場合。
●非反射性流涙
 涙排泄系の異常によっておこる場合。

それぞれに様々な原因によるものがあります。

涙は眼をうるおし、保護するという大切な役目を担っています。
涙が出なくなったり、少なくなったりする事で起こる、角膜や結膜の疾患「乾燥性角結膜炎」は
さらに怖い疾患と言えるかもしれません。

間違った表現かもしれませんが、
眼は常に新鮮な涙により正常に保たれている(よく見える様な仕事も兼ねている)といっても良い様に思います。
その為、常に一定の量が分泌され、一定の量が排出されています。
例えば、
10の涙が常に流れ出、10の涙が常に鼻へと排出されています(10-10=0)。
水道(涙腺:主涙腺と瞬膜線)と配管(涙点→涙細小管→涙嚢→鼻涙管→鼻)が
眼という容器の水を常に新鮮にそして一定の量を維持しているという事です。

水道が10以上出ればその分(15-10=+5)溢れ出ますし(流涙症:反射性流涙)
人では泣くのもこの一つだと思って頂いても良いかと思います。
10以下になればその分(5-10=-5)乾き、
水の引いた田んぼの様にカラカラに乾いて表面がめくれたり(乾燥性角結膜炎)します。
あるいは、配管が詰まったり、もともと流れの悪い配管であったり、
中継所がおかしくなったりで、流れが悪くなり5しか流れなくなれば(10-5=+5)
5溢れ出るという具合になっているように思います(流涙症:非反射性流涙)

これらを頭の片隅において頂き…
次回からは、
涙・唾液・耳どうしてやける(染まる)の?治るのだろうか?何がどうなのか?
何を気を付ければよいのか?関連したものとは?涙やけから見えてくる事とは!
などについてお話しさせて頂きます。

一つの現象から見えてくる様々な注意点。
一つの現象は他の現象がおこる警告かもしれない。
一つの現象は他の現象を解くカギかもしれない。
一つの現象を改善すれば他の現象もおさまるかもしれない。
一つの現象は他の現象の一部かもしれない。

お家の獣医さんもそう思って見てあげて下さい。

私たち獣医師は 流涙症・涙やけ(おっしゃらなくても)に限らず、
お子さんがお越しになられた時、関連性のある疾患を念頭におき、色々な部分を診させて頂くことかと思います。
そして、親御さんの予期されない様なお話をする事があるかもしれません。
しかしそれが主治医である獣医師の存在的意義の一つではないかと思っています。

「そんな事で診せに来ていないのに、聞きもしていないのに関係の無い事を言って・・・!」

なんて思わないであげてください。
時には嫌な事、嫌われるかもしれない事をお話しさせて頂かなければならないのも
本当にその子の事を考えている主治医かもしれません。
もちろん信頼性・信用性のうえにたっての事ですが・・・
ご判断ください。