歳をとってわがままになった。
小さい時のように戻った。
気がきつくなって咬みにくる。
気に入らない事だと歯をむいて怒って来る・・・などなど、
歳をとるにしたがってこのようなことを感じている親御さんもいらっしゃる事かと思います。
病院に行かれてその事をお尋ねになると、返ってくる答えは、
「人間も歳をとると子供に戻るっていいますからね‥」なんて言われる事が多いかと思います。


でも少し待って下さい。
この様な仕草や態度が見られたら、ちょっと身体の事を気づかってやってほしいのです。
「歳をとったらみんなそうだろう!そりゃお年寄りには気づかってあげるよ!」
そうですね。でも、少し違った面で見てあげてほしいと思うのです。
その意味において、ちょっとお話しさせて頂きます。

犬も猫も同じだと思いますが、犬においてお話しさせて頂くことにします。
生命が芽吹き、そして胎児へと変化し、御産により母の体外へと独り立ちの一歩となります。
この間の月日と言えば約2か月と数日
では、人ではどうでしょう。約10か月と10日ほどかかるといわれています。
ということは、人に比べて犬は、約5分の1、いわゆる[約5倍]のスピードで発育していることになります。
これだけでも犬の寿命が人の寿命(日本人約80年)の5分の1、約12〜15年(およそです。学者さんによって異なりますが) という事が伺い知れると思います。
さて、生まれてきて、”独り立ちへの第一歩”。まさに瞬時にハイハイして歩きだします。
お母さんに舐め舐めしてもらいオッパイヘまっしぐら。
そしてぐんぐん成長し、目が開きそして目が見え出し、3週間ほどで乳歯が生え始めます。 
4週間もたてば、そこら中を歩き回るほどになります。
離乳も始まり、2か月ほどで乳歯が生えそろいます。4か月もたてば換歯期(永久歯に生え換わる時期)に入り、数か月(生後7〜8か月)で永久歯に生え換わってしまいます。
また、女の子は初めての排卵前出血:準備出血にも入りだします。

という事は、犬は、
4ヶ月ほどで人の幼稚園の年長さんぐらいに成長し、
8か月ほどで小学校高学年10歳ぐらいに成長する事になります。
よく犬の1年は人の○○年と言われていますが、この様に人の十数年をわずか1年たらずでやってのけるのです。
おわかりだとは思いますが、それと比例して、年齢的に身体がいう事をきかなくなった時には急激に進行することになるのです。

私はそれぞれの成長時期や、老化時期の速度の違いにより、人との年齢対比は
出来ないと思っています。
というより、人と比較する事自体が間違っているのではないかと考えています。
犬種や住んでいる地域や国などで全く違ってくるでしょうし。
その子その子の成長によって全く違ってくると思っています。
その辺はまたお話しさせていただく機会があろうかと思います。




余談はさておき、本題に戻ります。
1歳までには本来(野生)では自分で食事の捕獲がはじまります。
そう、[アスリート]の登場です。
毎日10種競技を行っているのと同じか、それ以上の運動を行っている様なものです。
そしてそれが生(勢)ある限り続けられます。
”生涯[アスリート]”であればこそ、自然界を生き抜けるのではないのでしょうか。
少しの刺激や少しの変化に対し俊敏に行動がとれる身体を維持している事になります。
そのバランスが崩れた時、野生では当然生命の終止符が打たれる事となるでしょう。

一般には5歳頃から老化が始まると言われています。
が、[アスリート]の体を維持するには、
アスリートなりの食事内容や量を維持してあげるのも必要ではないでしょうか。
食事などの生活環境を老化や年齢的に変える事がかえって老化を後押ししてしまう事になりかねない場合もあるのです。
(親御さんが作り出してしまった老化疾患もある様に思います・・)
当然、可愛がっておられればこそだという事は十二分に理解しています。(様々な情報が錯綜している世の中であればある程。)

しかし、若いと思われていた時の生活環境に戻して頂く事だけで、元気になった、若くなった、
という様な事がしばしば見受けられるのも確かです。
[アスリート]にお年寄り扱いをしてあげるのはちょっと可哀想じゃないでしょうか?

ところが[アスリート]であることが維持できなくなってきた時・・
(私はある意味において、この時点が老化・衰弱転機時期ではないかと思っています。様々な御意見があるとは思いますが・・・。そして各ヶ所それぞれの早期老化性疾患はあるにせよ。)
その時は、どうでしょう。
今まで出来ていた事が出来にくい。イライラする事でしょう。腹も立つでしょう。
飛び起きていたものが起きれない、すぐに回避できない。
そんなときは、歯をむいて「ウ〜」。唸るしかないのではないでしょうか。
そうです、その様な時に、どこかが悪くなってきた、生命の維持に陰りが出て来たと思っても差し支えないのではないでしょうか。
その原因を少しでも改善することにより、その様な行動が落ち着く場合もしばしば見受けられます。
どこかが悪くなってきた原因を、数年前に見つけてやり改善し、
そして数年先にバランス良く年齢を重ねていくことが
お互いに最後まで楽しく過ごせるポイントの一つではないでしょうか。

ただ、何も症状が出ていない時点で、
(元気に走り回り、食事もいっぱい食べ、何不自由ない[アスリート]である時に。)
それも数年前にそれらの判断をするのも難しい事であり、
親御さんも理解出来にくい点でもあるように思います。
しかし予防医療には避けては通れないそして最も重要なことの一つだと私は思っています。
避けては通れない年齢の積み重ね、老化。
不自由の少ない、バランスのとれた本来の老化であってほしい。
そう願っています。

僕たち生涯[アスリート]!
汗かきベソかき運動会。
毎日毎日運動会。
歳をとっても[アスリート]。
必要なんですエネルギー。

分かってあげて下さい
その子、その子の年の取り方がある事を。
その子、その子の必要なものそして時期がある事を。
「仕草の変化」は必ず「身体の変化」だという事を。

お家の獣医さんが必ず分かってあげられるはずです。