「ストーカー規制法」対策(その1)

【個人でできる『ストーカー規制法』対策】

平成12年5月18日、第147回通常国会において「ストーカー行為等の規制等に関する法律(いわゆるストーカー規制法)」が成立し、同年11月24日から施行されました。しかし、多くの法律と同じようにこの法律も万能ではありません。
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●「ストーカー規制法」の限界とは?

ストーカー規制法とは

平成12年5月18日、第147回通常国会において「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」が成立し、同年11月24日から施行されました。この法律はストーカー行為等を処罰するなど必要な規制と、被害者に対する援助等を定めており、一般市民をストーカー行為の被害から守るためのものとされています。

この法律の中では、以下の8つをいわゆる「ストーカー行為」として定義しています。

  1. つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という)の付近において見張りをし、又は住居などに押しかけること。
  2. その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  3. 面会・交際その他の義務がないことを行う事を要求する事。
  4. 著しく粗野または乱暴な言動をすること。
  5. 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはFAXを用いて送信する事。
  6. 汚物、動物の死体その他著しく不快又は嫌悪の情を催させるようなものを送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
  7. その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  8. その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他のものを送付し若しくは知り得る状態に置くこと。

規制法の限界

これだけを読むと、一見、警察は申し立てをすればすぐにでも動いてくれそうな気がしますが、はたしてそうでしょうか?
 実はこの法案には不思議な点が3つあります。

「目立ちたがりのストーカー?」

まず1つ目ですが、第2条の第2項に以下のような表現があります。

「この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう」

この項目の中に「前項第一号から第四号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」という表現があります。

これは(1)〜(4)の「つきまとい・待ち伏せ・押しかけ」「監視していると告げる行為」「面会・交際の要求」「乱暴な言動」について述べたものですが、これは要するにストーカーがこれらの行為に訴えてきた場合でも、それが目に見えて第三者がわかるような状態でないと、「ストーカー行為」としては認められないということを言っているわけです。

しかし考えてもらえばわかると思いますが、はたして目に見えて第三者にわかるようないやがらせ行為に訴えるストーカーというのは、果たしてストーカーと呼べるでしょうか? それはもはや「軽犯罪法違反者」や「住居侵入罪違反者」「名誉毀損罪違反者」であり「脅迫罪違反者」等の単なる犯罪者でしかないでしょう。

考えてみれば、(5)〜(8)の「無言電話、連続した電話、ファクシミリ」「汚物などの送付」「名誉を傷つける」「性的羞恥心の侵害」についても、被害を受けた側が手許に物的証拠を残しやすいかたちの嫌がらせですので、訴えやすいという意味ではストーカー的ではないかもしれません。これらから考えると、この法律での「ストーカー」の定義は、すこし一般の認識から外れているように思えます。言葉に表現しにくく法律の判断も及びにくい領域に踏み込んでくるからこそストーカーはストーカーであるともいえると思うのですがいかがでしょうか?

「最初は警告だけしかしてくれない?」

2つ目の不思議な点は第3条以降にあります。

第3条以降では警察がストーカーに対して実際に行使できる行動が定められていますが、一番最初にすることが「警告」で始まっています。これはつまり被害者がストーキングによる被害を訴えても、その段階では警察は警告を発するだけで実際には動いてくれないということです。さすがに4条以降で罰則等について決められていますが、それらはあくまでも警察の警告に応じなかった場合に発動されるものでしかありません。

しかしこれも考えて頂ければわかると思いますが、ストーカー行為に訴えるようなタイプの人間が、あっさりと警察からの警告に応じるでしょうか? むしろ逆効果になって事態が悪い方へとエスカレートする可能性があると思われますが、そうなっては元も子もありません。

「元恋人や夫(妻)からのストーキングはオーケー?」

3つ目の不思議な点は、この法案が恋人や夫婦間のようないわゆるドメスティックな関係におきたストーキングと、まったく見ず知らずの人間から受けるストーキングの2つについて、はっきりと対応を区別していない点にあります。つまりそれらの区別に関しては、あくまでも管轄署の判断にゆだねるスタンスを取っているわけです。

しかし考えて頂ければわかると思いますが、そもそも警察のような公的機関が、第三者から見ればただの痴話げんかにしか見えないような「いざこざ」に介入してくるでしょうか? おそらくそれはドメスティックな関係であるがゆえに、ただの民事事件とみなされて相手にしてくれないか、あるいは相手にしてもらえても対応が遅れたりあいまいになったりする可能性が高くなるでしょう。ですからこの法案は、たとえとてつもないストーキングを恋人や夫(妻)等から受けていたとしても、役に立たないかもしれないのです。

結論:「自分の弱さを知る」ということ

これら3点から見てみると、この規制法が実はストーカー犯罪を直接取り締まるものではなく、ストーカー犯罪に対して警察が動いてもいい範囲と、動き方を取り決めただけの、いわばマニュアルに過ぎないということがわかります。

もちろん具体的な相談に乗ってくれるケースもあるでしょうし、実際には窓口を設けて対応しているところも多数あります。また実際に事態が解決に向かった例も多数あると聞きます。もとよりこのテキストでは、この法案の有効性を完全に否定するつもりはありません。むしろここで指摘したいのは、わたしたちがこの規制法を安易に、そして過度に信用することの危険性なのです。

人間の感情は複雑で深く、そしてもともと目に見えないものです。その点につけこんでくるのがストーカー犯罪の怖いところなのです。ですが、先にも述べましたが、警察はあくまでも公的機関ですから基本的に第三者に過ぎず、個人の感情の深いところまでは面倒を見てくれません(あるいは見ることが出来ません)。たとえどれだけ自分がストーキングによって深く傷つけられ、そのことを声を枯らして訴えたとしても、それが目に見えてわかる問題や事件でなければ、結局は誰も動いてはくれないということなのです。先に述べたこの法案の3つの問題点も、あくまでもその原則にのっとったものでしかなく、それ自体はしかたのないことなのだと思います。

ですから私たちは、普段から警察や法律の限界と何があっても守り通したいものとの距離を知り、状況を見て何らかの防衛手段や対策を講じ絶えず自己管理を怠らず、被害に遭えば慌てずに証拠を根気よく集め、いつでも出るところへ出て戦えるようにすることが重要だと言えます。

つまり、まず一番に重要なことは、あらゆる意味での「自分の弱さを知る」ということなのです。


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