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うちの蔵の自慢でもある、吉野杉の木桶は120年以上使い込まれてきた伝統あるものです。
創業以来、代々受け継がれ、今もなお美味しい醤油を醸してくれています。
木桶は、長時間、仕込みをせずに空のまま放置すると、タガ(桶の周りを固定している竹の輪)が緩み、抜けてしまい、使い物にならなくなります。先代、そのまた先代たちが、止むことなく、毎年毎年、仕込みをしてきたからこそ、今もなお、ここに木桶があるのです。今よりもっと設備もなく、大変な時代を経て、120有余年、一度も休まず仕込みを続けることは、並大抵のことではないと思います。
私にこの木桶を繋いでくれた、先代たちに、いつも感謝しています。もろみ蔵に入ると、先代たち、木桶たちが私に語りかけます。「この先もずっと、先代たちがしてくれたように、あんたもずっと私を使ってね。そして、次の代にちゃんと繋いでおくれよ。」
この木桶を、次の代に繋いではじめて、一人前の蔵主になれるのかもしれません。
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