浮世絵は江戸のあらゆる流行物を描いた最もポピュラーな印刷物。 様々な出版社(版元)から次々と新作が発売され、色鮮やかな浮世絵が店頭に並びました。 人気作は増刷を重ね、何千枚と販売されました。
当時の浮世絵の価格は蕎麦1杯分。誰もが気軽に買えるものでした。 流行の着物を着た美人画や歌舞伎俳優を描いた役者絵は、まさに現在のファッション誌やブロマイド。 地方の人には最高の江戸土産でした。
浮世絵師の多くは職業画家として、人々の要望に応じ、人気の人物・話題の場所などを描きました。 その絵を職人たちが版画にします。 商品化のために描くものなので、浮世絵師の仕事はデザイナーに近いと言えます。
まず、彫師(ほりし)が山桜の板に図柄を彫って版木(はんぎ)を作ります。 そして、摺師(すりし)が版木を使い、和紙に一枚一枚、色を摺り重ねて完成します。 アダチ版画では、今も職人がこの江戸時代以来の伝統的なスタイルで、浮世絵を制作しています。
幕末以降に海を渡った浮世絵は、大胆な構図と鮮やかな色彩で西洋の人々を魅了しました。 印象派の画家たちに影響を与え、空前のジャポニズムブームによって、多くの浮世絵が日本から海外へ流出した程です。
浮世絵の印刷は、和紙の繊維の中へ絵具の粒子 を入れ込む、人の手でしか出来ない技術。 それが美しい色彩の秘密です。 絵具に接着剤や定着剤は入れません。和紙の中で、絵具の素材そのものがいつまでも鮮やかに発色するのです。
遠景の街並み、女性の髪の生え際など、浮世絵に見られる細密な描写。 これらは全て、堅い山桜の木に彫師が刀一本で彫り上げた線です。 長い修行を経て習得される熟練の職人技。1mmの狂いも許されません。
200年前に、庶民がフルカラーの印刷物を気軽に楽しめたのは、世界中で日本だけ。 この豊かな文化を支えた高度な技術は、印刷技術が多様化する今日においても唯一のものとして、職人たちの手から手へ受け継がれています。 日本にしかない芸術品として、外国への贈り物にも最適です。