No.31 浮絵(うきえ)
       −こんな洋風な浮世絵もあったんだ!−

今回は、今月のお買得ギフトで歌川豊春 「浮絵洛陽四条河原夕涼図」をご紹介中ですが、そのタイトルにもある「浮絵」についてお話ししましょう。

浮世絵の間違いじゃない?と思われる方も多いことと思いますが、浮絵(うきえ)とは、西洋画でもちいられる遠近法を取り入れて描かれた浮世絵の一様式のことをさします。ネーミングの由来は、諸説ありますが、遠方より近景が浮いて見えるためにそのように呼ばれるようになったと言われています。


浮絵のはじまり
浮絵が登場しはじめたのは、寛保年間(1740年代前半)ころで、将軍吉宗の時代だそうです。この頃は、まだ版画の様式も多色摺りのものではなく、輪郭線のみが板で摺られ、それに手で彩色をしたものなどが中心だったようです。
代表的な作品の中から古山師政 「新吉原座敷拳相撲」をご紹介しましょう!
「こんな浮世絵があったんだ。」と思われる方も多いのではないでしょうか?吉原の遊郭の中で、何部屋も遠く続く室内を遠近法を使って奥行きある図に仕上げています。


初期の浮絵は、「新吉原座敷拳相撲」のように部屋の中を描いたものがほとんどで、
いわゆる屋外のみを描いた風景画はあまりなかったようです。


浮絵の成熟

その後、版画の様式も板で全て多色摺りができる錦絵が誕生し、浮世絵版画自体が発展をしていくと同時に、浮絵も成熟していきました。浮絵を浮世絵の中の1つのジャンルとして確立したのが歌川豊春という絵師です。

豊春は、模倣をするということから浮絵を描くことを身につけていったようです。その中の代表作が左の「浮絵紅毛フランカイノ湊万里鐘響図」です。これは、イタリア人作家の銅版画を模したものだそうです。まさにベニスのゴンドラを思い起こさせる図で、これまでの浮世絵にはない世界を生み出すことに成功しています!


 


豊春の素晴らしいところは、ただ単に模倣で終わったのではなく、模倣をすることにより西洋の遠近法を自分の中で消化し、浮絵というジャンルを定着させたことでしょう。

それを 「浮絵洛陽四条河原夕涼図」は見せてくれます。
遠近法という西洋の技法と日本独自の木版が得意とするボカシの技術をあわせてつかうことで、空を広く感じさせながら季節感あふれる浮絵作品になっていますね。



浮絵から風景画へ

豊春の功績により多くの画家達が浮絵に挑戦をしています。皆さんが良くご存知の葛飾北斎も浮絵を描いています。「新板浮絵王子稲荷飛鳥山之図」はその中の1図です。

葛飾北斎は、西洋絵画の技法や構図をさらに進めて学び、研究をしていきます。それによって、浮世絵の代表作といえる「神奈川沖浪裏」などを始めとする大胆な構図を生み出すことができたのかも知れません。


浮絵は、天保期(1730-43)
以降はほとんど描かれなくなり、風景画へとなだらかに発展をしていきます。
意外に知られていない浮絵の存在ですが、浮絵が浮世絵の世界にもたらした影響は本当に大きいものだと言うことに気がつかされます。
ちょっと変わった浮世絵を探しているという方には是非オススメです。アダチ版画ならではの豊富なラインナップがありますのでお楽しみください。浮絵一覧 >>

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(周)